本研究では、コージェネレーション(Combined Heat and Power; CHP)の協調制御によるアンシラリーサービス提供(電力系統の周波数制御への参加)のための、電気および熱供給システムの統合的な数理モデリングおよび制御手法の開発を行った。前年度の検討では、下位の制御器において電気供給システムと熱供給システムの速い応答に対する統合的な追従制御を入出力線形化により達成し、上位の制御器において熱供給システム遅い応答を考慮してモデル予測制御により軌道生成を行う階層的な制御手法を提案した。本年度は提案する制御手法の実システムへの適用に向けた課題に着目し、以下の2点について検討を行った。 (1)電気および蒸気供給の統合的なモデリング: 前年度は2つのCHPで構成されるエネルギー供給系を対象に制御手法の検討を行った。本年度は提案する制御手法がより広い対象に適用可能であることを確認するために、任意の個数のCHPを有し、そのネットワーク構造が有向グラフで表される系の数理モデル化について検討し、電力および蒸気供給の動特性が2つのCHPで構成される系の場合と同様の形式でモデル化可能であることを示した。これにより下位の制御器における入出力線形化が任意のネットワーク構成の系において適用可能であることがわかった。 (2)蒸気供給の電気回路との対応に基づくモデリング: 前年度は提案する制御手法の有効性を主に時間領域の数値シミュレーションに基づき検証した。本年度は安定性の観点での検証に向けた検討として、蒸気供給ネットワークの安定性解析に適した数理モデリングの検討を行った。非線形電気回路に対しては混合ポテンシャルに基づく方法が知られており、本研究では蒸気供給ネットワークを電気回路と対応させることで混合ポテンシャルに基づきモデル化するための条件を導出した。
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