研究課題/領域番号 |
20K14777
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
稲葉 優文 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20732407)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 誘電泳動 / 電界整列 / 放熱シート |
研究実績の概要 |
デバイスと、ヒートシンクなどの放熱構造の間には、表面の粗さに起因する空隙層が存在するため、熱が伝わりにくい。これを克服するには凹凸に追従し、高い熱伝導率をもつフレキシブル伝熱シートが要求される。フレキシブル伝熱シートには、柔軟性を持つ樹脂に、高熱伝導率のフィラーを混入した複合材料が用いられるが、フィラーの高充填化は柔軟性の低下、フィラーの使用量増加による高コスト化につながり好ましくない。高熱伝導率のフィラーを、充填率を抑えつつ混入することで、高い熱伝導率と柔軟性、さらにデバイスとの電気絶縁が同時に達成できれば、非常に有望なフレキシブル伝熱シートが実現でき、半導体デバイスのサーマルマネジメントに大きく貢献できる。ダイヤモンドは、室温中でも2000 W/mKのフォノン伝導による非常に高い熱伝導率を持ち、電気絶縁性も高い。そこで、高熱伝導率・絶縁性のダイヤモンド微粒子の誘電泳動技術の確立と、そのフレキシブル伝熱シートへの応用を本研究の目的とした。 ダイヤモンド微粒子が、アクリル樹脂溶媒中で整列するかを確認するため、平面方向に電界が生じる電極上にダイヤモンド微粒子懸濁アクリル樹脂溶媒を滴下し、挙動を観察した。数分の電圧印加でダイヤモンド微粒子が鎖状に連なった構造を形成することが確認できた。このとき、印加電圧は、3kV, 4kHzの交流とした。次に、ダイヤモンド微粒子を面直方向に整列する系にて、伝熱シートを作製した。このとき、ダイヤモンドフィラーは60 wt%となるように調製した。電圧印加により、直径30 μmのダイヤモンド微粒子混合伝熱シートの熱伝導率は0.6 W/mKから1.0 W/mKに向上した。この値はアクリル樹脂の場合(0.22 W/mK)のおよそ5倍であり、ダイヤモンド微粒子フィラーにより熱伝導率向上の効果が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標として、1)低い充填率で同等の熱伝導率を達成すること、2)電界印加を工夫し、さらに高い熱伝導率を達成することが挙げられる。これに向けて、電界整列をより効果で記に実施する電極系の構築を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね使い切っている。繰越額は2021年度の消耗品購入に充当する予定である。
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