研究課題
デバイスと、ヒートシンクなどの放熱構造の間には、表面の粗さに起因する空隙層が存在するため、熱が伝わりにくい。これを克服するには凹凸に追従し、高い熱伝導率をもつフレキシブル伝熱シートが要求される。フレキシブル伝熱シートには、柔軟性を持つ樹脂に、高熱伝導率のフィラーを混入した複合材料が用いられるが、フィラーの高充填化は柔軟性の低下、フィラーの使用量増加による高コスト化につながり好ましくない。高熱伝導率のフィラーを、充填率を抑えつつ混入することで、高い熱伝導率と柔軟性、さらにデバイスとの電気絶縁が同時に達成することが重要である。ダイヤモンドは、室温中でも2000 W/mKの非常に高い熱伝導率を持ち、電気絶縁性も高い。ダイヤモンド微粒子の電界整列をフレキシブル伝熱シートへ応用することで、フレキシブル、高熱伝導率、電気絶縁の3つの機能を発現させ、高い熱伝導率を持つ絶縁性フレキシブル伝熱シートの作製が可能であると考えられる。本研究では、ダイヤモンド複合伝熱シートにおいて内部構造を最適化し、より高い熱伝導率を達成することを目的とした。2021年度には、ダイヤモンド微粒子の電界整列性の向上を試みた。微粒子は樹脂よりも比重が大きく、電荷整列の際に沈降して下方向に集積し、熱伝導パスとなるダイヤモンド鎖の形成が確認されなかった。そこで、ダイヤモンド鎖を形成できるように、伝熱シートを立てて形成することで重力の影響を抑止することを試みた。また、沈降抑制のために、樹脂粘度を調整した。これらにより、以下の知見を得た。①伝熱シート形成の際の粒子沈降を抑制することでシート内の微粒子の存在分布を制御することが可能②高粘度であるほうが、微粒子-微粒子間のクーロン引力の影響を高めることができる高熱伝導度の伝熱シート作製には至らなかったものの、微粒子の電界整列制御のための知見を蓄積できたといえる。
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Sensors and Actuators B: Chemical
巻: 344 ページ: 130257~130257
10.1016/j.snb.2021.130257
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