研究実績の概要 |
従来ほとんど検討されてこなかった(111)配向型の磁気トンネル接合(MTJ)について理論的検討を行った。 1. まずこのようなMTJの中で最もシンプルなfcc-Co/MgO/fcc-Co(111)、fcc-Ni/MgO/fcc-Ni(111)の検討から始めた。第一原理計算とLandauer公式に基づく伝導計算の結果、fcc-Coを用いたMTJにおいて2000%を超える高いトンネル磁気抵抗比(TMR比)が得られることを明らかにした。また電子状態を詳細に解析した結果、このような高TMR比はCo-3dとO-2pによる界面反結合状態が左右界面間で共鳴トンネルを起こすことで引き起こされることがわかった(界面共鳴トンネル機構)。本成果は論文誌(K. Masuda, H. Itoh, and Y. Miura, PRB 101, 144404 (2020))に掲載された。 2. 続いてMTJ中の強磁性電極材料をfcc単元素金属から同じくfcc構造を持つL11合金に変えTMR比の解析を行った。L11合金は[111]方向に強い結晶磁気異方性を持つため、これらの合金を含む(111)配向MTJでは大きな垂直磁気異方性の達成も期待できる。計算の結果、Coを含むL11合金(CoNi、CoPt、CoPd)を用いたMTJにおいて、大きな垂直磁気異方性と2000%を超える高いTMR比が両立しうることがわかった。このMTJの場合にも高TMR比は界面共鳴トンネル機構によって生じていることが明らかになった。また大きな垂直磁気異方性の起源についてもスピン軌道相互作用に関する2次摂動解析を用いて議論を行った。本成果は論文誌(K. Masuda et al., PRB 103, 064427 (2021))に掲載された。
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