研究課題/領域番号 |
20K14782
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
増田 啓介 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 研究員 (40732178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 磁性 / 表面・界面物性 / トンネル磁気抵抗効果 / 垂直磁気異方性 / 第一原理計算 / 磁気トンネル接合 |
研究実績の概要 |
本年度は主にペロブスカイト酸化物SrTiO3を絶縁バリア層に用いた(111)配向磁気トンネル接合(MTJ)について解析を行った。SrTiO3は従来用いられてきたMgOに比べ小さなバンドギャップを有するため、不揮発磁気メモリ(MRAM)応用で必要な低い面積抵抗を実現できる可能性がある。またMgOバリアの場合よりも強磁性電極-絶縁バリア界面の格子ミスマッチを小さくできる可能性もある。 第一原理計算とLandauer公式を用いた伝導計算の結果、典型的な強磁性電極とSrTiO3バリアからなる(111)配向MTJが500%を超える大きなTMR比を有することが明らかになった。またこのような大きなTMR比は、強磁性電極および絶縁バリアのバルクのバンド構造に基づくコヒーレントトンネル機構で説明できることも明らかになった。 昨年度までの我々の研究では、MgOを絶縁バリアにした(111)配向MTJに焦点を当ててきた。このようなMTJでは、MTJ界面に生じる界面状態が共鳴トンネルを起こすことで大きなTMR比が得られることが見出されてきた。一方本年度の研究を通じて、SrTiO3バリアを用いた(111)配向MTJではMgOバリアの場合とは定性的に全く異なるコヒーレントトンネル伝導由来の高TMR比が発現することがわかった。現在本成果に関する論文を執筆中であり、次年度中には出版可能であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シンプルなMgO以外の絶縁バリアについても解析を進められたことで(111)配向MTJにおける伝導機構の理解を進展させることができたため。本年度の成果によって、(111)配向MTJは当初予想していたよりも系に依存した多様な伝導機構を有することがわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
代表者が所属する物質・材料研究機構の磁性・スピントロニクス材料研究拠点では本年度より本格的に(111)配向MTJに関する実験研究がスタートし、様々な実験結果が得られつつある。今後は本研究を通して得た知見によって、実験結果がどの程度説明可能であるかを明らかにしたい。また新たな実験結果から良い刺激を受け、本研究をより一層推進させたいと考えている。
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