研究課題/領域番号 |
20K14790
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
崔 容俊 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80868828)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオセンサ / フィルタフリー / 多波長 / イメージセンサ / レジオネラ菌検出 / クロロフィル測定 / ウィルス検出 |
研究実績の概要 |
Triple-well構造のフィルタフリー多波長イメージセンサを実現するため、豊橋技術科学大学のLSI工場で、提案したセンサの製作を行った。バイオ分野への応用に向けて,100×100 μmのセンシングエリアを有するセンサを3×3 pixelと16×16 pixelの2種類で作製し,フィルターフリー多波長イメージセンサの製作に成功した.小型波長計測システムを実現に向けて,周辺回路の製作を行った.オペアンプによるI-V変換回路,16 bitのA/Dコンバータ,マイコンを用いることでセンサの計測システムを構成し,Bluetooth技術を用いて小型無線システムの製作を行った. センサの特性評価のため,レイザー可変光源を用いて単一波長を照射し,430 nmから1000 nmまでの広い範囲で波長の識別に成功した.さらに,単一波長に対して0.1nm以下の波長を識別可能なの波長分解能が確認された.センサの表面側と基板側の電流比は光強度に依存しないため,波長の半値幅によらず波長の識別が可能であることが示唆された.さらに製作したセンサを用いて,波長の検出,吸光度測定,スペクトルシフトの検出法の原理を確立した. 製作したセンサを用いてバイオへの応用実験を行った.波長の検出の応用で,蛍光ビーズの定量とレジオネラ菌の検出に成功した.吸光度測定の原理を用いて非破壊方式での葉のクロロフィルaおよびクロロフィルb検出法を提案し,農業分野への応用に向けた小型クロロフィル計測システムの製作を行った.クロロフィルの標準試薬を用いて検証実験を行い,センサの電流比からクロロフィルa/bの検出に成功した.提案したスペクトルシフトの検出原理を基に金ナノ構造に吸着するSars-Cov-2のIgGタンパク質による透過波長のスペクトルシフトをセンサで検出することに成功し,迅速かつ小型ウィルス検出システムの実現が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・センサの設計・製作:各画素に独立されたn-wellを形成し,表面と基板側に流れる電流を同時に読み取り可能なCMOS回路の設計を行い,豊橋技術科学大学のLSI工場で,100×100μmのセンシングエリアを有する1pixel,3×3pixel,16×16pixelのイメージセンサを作製した. ・センサシステムの開発:小型波長計測システムの実現に向けて,周辺回路の設計とPCB基板の製作を行った.製作したシステムはBluetooth機能を用いて無線通信が可能である. ・センサの評価およびバイオへの応用:レイザー可変光源を用いて単一波長を照射し,430nmから1000nmまでの広い範囲で波長の識別に成功した.センサの表面側と基板側の電流比は光強度に依存しないため,波長の半値幅によらず波長の識別が可能であることを検証を行い,波長の検出,吸光度測定,スペクトルシフトの検出などの測定法を確立した. ・バイオ分野への応用:①マイクロ流体を製作し,多数の蛍光ビーズを同時に検出することに成功した.②UV照射により自家蛍光発光するレジオネラ菌の検出に成功した.③非破壊方式での葉のクロロフィルaおよびクロロフィルbの比率の検出法を提案し,クロロフィルの標準試薬を用いてクロロフィルa/bの検出に成功した.④金ナノ構造に吸着するSars-Cov-2のIgGタンパク質による透過波長のスペクトルの変化を検出した. ・研究成果:論文2件,国際会議3件,国内会議5件
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今後の研究の推進方策 |
①センサの開発:(R4.前期)波長分解能の向上に向けて,センサ内部のポテンシャルピークを大幅(10um以上)に調整可能なセンサの設計とシミュレーションを行う.(R4.後期)センサの製作を行う. ②センサシステムの開発:(R4.後期)クロロフィルの検出システムと局在表面プラズモン共鳴バイオセンサシステムを製作する. ③バイオへの応用:(R4.前期)局在表面プラズモン共鳴バイオセンサによるウィルスの検出を行う.(R4.後期)農業現場で葉のクロロフィル計測を行う. ④研究成果の報告:(R4.前期)国内学会、国際会議 (R4.後期)国内学会、論文投稿.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大の影響で計画した国際会議・国内学会が中止またはオンライン会議に変更され、初年度に予定した旅費に対して、次年度使用額が生じた。次年度使用額は応用実験に向けた試薬と検出システムの部品の購入と国内・国外の旅費に使用する予定である。
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