研究課題
現在の太陽電池の主流である単接合型太陽電池の変換効率は理論的に約30%に制限される。その理論変換効率を超える太陽電池のアイデアがいくつか提案されているが、我々は2個の低エネルギー光子から1個の高エネルギー電子を生成する2段階アップコンバージョン(TPU)現象を利用した、新しい太陽電池構造である、2段階フォトンアップコンバージョン太陽電池(TPU-SC)を提案した。本研究では、アップコンバージョンによる電流上昇効率を現状からさらに10倍向上し、変換効率向上に寄与することを目的とする。1年目は変調ドーピングによるアップコンバージョン効率の3倍以上の向上、2年目は量子ドットの位置の最適化による効率の3倍の向上に成功し、当初目標の10倍以上の向上はおおむね達成した。量子ドットの位置に関する報告は今年度、論文発表にて行う。一方、1年目、2年目で実施してきた内容より、ラチェット型の新たな構造の着想を得たので、それに関する実証試験を3年目に行った。その結果、明確な効果が得られたため、その実証を行うために、次年度より新たなプロジェクト時実施する。また、正孔によるアップコンバージョンによる電流減少という特異な現象のメカニズムに対して、本プロジェクトで取り組んでいる。現状、明確なメカニズム解明までは至っていないが、アップコンバージョンしたキャリアが受けるバリアの高さの差が、電子と正孔で異なっている可能性が非常に高く、確認実験を次年度も行う。総じて、本プロジェクトで当初目標としていたアップコンバージョン効率の10倍以上の向上は達成できた。
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Journal of Applied Physics
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