研究課題/領域番号 |
20K14796
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
松村 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (90806358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 半導体 / 電子デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、高いオン電流と低いオフ電流、および低いS値を有するトランジスタを、IV族材料で実証することを目的とし、ゲルマニウムスズ(GeSn)/ゲルマニウム(Ge)のヘテロ接合をソース・チャネル接合に用い、高誘電体(High-k)ゲートスタックで覆った「GeSn/Ge縦型ヘテロ接合ナノワイヤトランジスタ」を提案し、研究を推進している。今年度は、その基盤となるGeSn/Ge縦型ヘテロ接合を実現するため、Ge基板上でのGeSn薄膜、およびn型Ge薄膜のエピタキシャル成長に関する研究開発を主に行った。その結果、非常に高い活性化率を有するn型Ge膜を実現するとともに、バッファ層の挿入による高品質なGeSn薄膜のエピタキシャル成長を実現することができた。今後はレーザーアニール法を用いたさらなるn型ドーパントの高活性化や、得られた結晶の結晶性向上を行っていくと共に、デバイス技術の確立も行っていく予定である。また、本研究に関連して、ガラス基板上でのGeSn薄膜の結晶成長も同時に行っている。気相成長法やレーザーアニール法などを検討した結果、非常に高い置換Sn濃度を有するGeSn薄膜をガラス基板上で実現することができた。これらの結果もまた、次世代エレクトロニクスに置いて非常に有用であると考えている。 これらの成果はECS-JSS誌を始めとする複数の論文誌に投稿し、採択されている。また、5月に予定されている国際学会、ECS-Meetingにて発表する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、目的とするヘテロ接合ナノワイヤトランジスタの基盤となるGeSn/Ge縦型ヘテロ接合を実現するため、Ge基板上でのGeSn薄膜、およびn型Ge薄膜のエピタキシャル成長に関する研究開発を主に行った。その結果、非常に高い活性化率を有するn型Ge膜を実現することができた。また、GeSnはGeに対し格子定数が非常に大きいため、高Sn濃度を有するGeSn膜をGe基板上へ直接エピタキシャル成長することは難しかったが、今回我々は深さ方向にSnの組成傾斜を有する層をバッファ層として挿入により、高品質なGeSn薄膜のエピタキシャル成長を実現することに成功した。さらに関連するテーマとして、石英基板上でのGe系材料の薄膜成長も立ち上がっており、これまでに無い高いSn濃度を有するGeSn薄膜などを実現しているなどの成果を得ている。これらの結果は、ECS-JSS誌を始めとする複数の論文誌にて発表・投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
実現したGe系結晶膜の結晶性を詳細に評価しプロセス技術へとフィードバックすることで、さらなる結晶性の向上を目指す。また、レーザーアニール法や固相成長法等を重畳することで、さらなるドーパント活性化率の向上を図るとともに、その電気的・光学的特性を評価する予定である。 また、デバイス周辺技術の確立も進めていく予定である。今年度、採択者は新たな原子層堆積装置(ALD)を導入し、high-k絶縁膜であるAl2O3膜の堆積が可能となった。この装置を用い、ゲートスタック構造の実現を図るとともに、その特性評価を通じて良好なデバイス技術を構築していく予定である。 オンガラス薄膜形成技術の向上も進めていく。現状、Ge,GeSnなどの薄膜をガラス上で実現しているが、その電子・光学デバイス応用やSiGeなどの他の材料への展開等を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、参加を予定していた学会が中止やオンライン開催へと切り替えられていったため、参加費や旅費分が浮いてしまった。そのため、発表できなかった成果が多く残っており、翌年度は学会での発表件数が必然的に増える予定のため、その参加費や旅費として支出していく。
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