研究課題/領域番号 |
20K14800
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鎌田 知久 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70804194)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セメント硬化体 / 細孔構造 / 細孔モルフォロジー / 幾何学的構造 / 3Dイメージング / FIB-SEM |
研究実績の概要 |
高炉スラグ微粉末混和および無混和のコンクリート供試体を作製し,水分浸透試験および空隙構造分析を実施した.供試体は,28日間の封緘養生を行い,その後乾燥を行なった.乾燥条件は,20℃,RH60%の環境で91日間,40℃,RH30%の環境で28日間,40℃,RH60%の環境で28日間の3水準とした.まず,吸水による質量変化率と水分浸透深さとを比較した結果,両者に良好な相関が認められた.ただし,使用材料により回帰式の傾きが異なることを確認した.高炉スラグ微粉末を混和したコンクリートの傾きは,普通コンクリートの約60%まで低減されており,同一の吸水量であっても水分浸透深さは普通コンクリートのそれよりも小さくなった.また,空隙構造の分析結果から,高炉スラグ微粉末を混和したコンクリートの連続空隙量,ピーク径および閾細孔径が普通コンクリートのそれらよりも小さくなることを確認した.これは,乾燥条件および表面からの深さに関わらず同様の傾向を示した.このことから,普通コンクリートは,比較的粗大な空隙を優先して水分が内部へと浸透可能であるのに対して,高炉スラグ微粉末を混和したコンクリートは,微細な空隙にしか水分が浸透できないことで,同一の吸水量であっても,水分浸透深さが小さくなったと考えられる.この結果を受けて,次年度実施予定のFIB-SEMによる空隙構造観察に用いるセメントペースト供試体を作製した.本供試体は,上記のコンクリートから骨材を除いた配合とし,養生および乾燥は同様の条件とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高炉スラグ微粉末混和および無混和のコンクリート供試体を対象に,高炉スラグ微粉末の混和の有無が空隙構造に及ぼす影響,並びに空隙構造と水分浸透性状との関係に関する定性的な知見を得た.また,新たに骨材を除いた配合で作製したセメントペーストに対して,本年度と同条件の養生および乾燥を行ない,FIB-SEMによる空隙構造観察に用いる供試体を作製した.これにより,空隙構造の三次元画像を取得する準備が整った.なお,FIB-SEMにより取得した空隙構造の三次元画像の解析方法に関しては,昨年度の検討において概ね確立している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度作製したセメントペースト供試体を用いて,FIB-SEMによる空隙構造観察を実施する.そして,空隙構造の高精度な三次元画像を取得し,それらを精緻に解析することで,高炉スラグ微粉末の混和の有無や乾燥条件の差異が空隙構造に及ぼす影響について検討する.本検討では,特に空隙の連続性や連結性に加え,空隙構造の複雑性の指標として屈曲度を求めることで,それらと物質移動性状との関係性を整理する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響を受け,一部計画を修正し,外部機関の装置利用を自粛した.次年度は,外部機関の装置を利用した三次元観察の実施を予定しており,次年度請求の助成金は装置利用費,旅費,論文投稿費等に充当する予定である.
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