普通ポルトランドセメント単味および高炉スラグ微粉末を0,25,50%質量置換した水結合材比60%のセメントペースト供試体を作製し,吸水試験,水分浸透試験,並びにFIB-SEMによる空隙の三次元微細構造観察を実施した.供試体は,成形後3日で脱枠し,材齢28日まで20℃の水中で養生した.養生後,40℃,30%RHの環境で7日乾燥させ,供試体底面から約30mmの範囲から所定の寸法に調整した小片試料を採取した.吸水試験の結果,高炉スラグ微粉末の置換率の増加に伴い,質量変化率(吸水率)が大きくなった.ただし,試験後の試料断面を観察したところ,普通ポルトランドセメント単味の供試体は試料中心部まで水が浸透していたのに対し,高炉スラグ微粉末を混和した供試体は表層1〜2mm程度までしか浸透しなかった.水分浸透試験の結果も同様に高炉スラグ微粉末を混和した供試体の水分浸透深さが小さくなった.FIB-SEMによる空隙の微細構造観察の結果から,使用材料によらず数百nmの空隙同士が数十nmの空隙により連結されている様子が観察され,特に高炉スラグ微粉末を50%置換した供試体では,隣接する粗大な連続空隙同士の連続性が高いという特徴が観察された.これは,高炉スラグ微粉末を混和した硬化体では,より連続性の高い複雑な空隙網を有することを示唆していると考えられる.また,空隙の連結性が高いことで水が空隙内を網羅的に浸透しやすくなり,水が空隙を満たしながら浸透するため吸水量に対して水分浸透深さが小さくなったのではないかと考えられる.2021年度に実施したコンクリートの実験結果と併せて考察すると,高炉スラグ微粉末を混和したコンクリートは,普通コンクリートと比較して密な空隙構造を有しているだけでなく,空隙同士の連結性が高い複雑な空隙網を有しているために内部方向への水の浸透が抑制されるのではないかと考えられる.
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