研究課題/領域番号 |
20K14802
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 賢之介 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (20821606)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エトリンガイト二次生成 / C-S-H / 硫酸塩劣化 / DEF |
研究実績の概要 |
2020年度は、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)が共存した場合におけるエトリンガイト二次生成の促進効果について、エトリンガイト生成量および原子結合状態の経時変化に着目した検討を行った。具体的には、純薬合成したモノサルフェートに、共存物質としてCaO/SiO2モル比が異なる合成C-S-H、水酸化カルシウム、非晶質シリカ等を質量比1:1として混合し、硫酸ナトリウム水溶液を用いて練り混ぜを行った。練り混ぜ後の試料は,XRD/Rietveld解析およびFT-IR測定を実施した。 また、実際のセメント硬化体に外部硫酸塩劣化およびDEF(Delayed ettringite formation)を生じさせ、その際の寸法および圧縮強度の経時変化を詳細に把握する実験を実施した。具体的には、普通・早強・低熱の3種のポルトランドセメントを用いて、水セメント比を40, 50, 60%としてΦ5×10cmのセメントペースト供試体を作製した。外部硫酸塩劣化導入供試体については5mass%濃度の硫酸ナトリウム水溶液に浸漬し、DEF導入供試体については最高温度90℃の温度履歴を与えた後に水中養生を行った。その後、所定の材齢で供試体寸法の測定および圧縮強度試験を実施した。 その結果、水酸化カルシウムと非晶質シリカが同時に共存した場合、初期材齢でのエトリンガイト量は比較的少なかったが、材齢とともに継続的に増加した。これは材齢の進行に伴いC-S-Hが形成されることにより、エトリンガイト二次生成が促進されたためと考えられた。また、セメント硬化体での検討では、いずれの劣化も早強セメントを使用して水セメント比を60%とした場合に早期に顕在化した。材齢84日までの結果では、膨張率および圧縮強度の変化率ともに同程度の値となったが、その経時変化は外部硫酸塩劣化とDEFで異なる挙動を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-S-Hの共存によるエトリンガイト二次生成の促進効果について、エトリンガイト二次生成量および、原子結合状態の経時変化の挙動を明らかにし、エトリンガイト二次生成メカニズムの解明に寄与する知見を得ることができたため。また、外部硫酸塩劣化とDEFという、メカニズムの異なるエトリンガイト二次生成現象による膨張劣化が発生した場合の、セメント硬化体の膨張挙動および圧縮強度の変化挙動の違いを見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、エトリンガイトの二次生成を生じさせたモルタル・コンクリートのマクロスケールでの力学特性を実験によって評価する。2020年度における実験と同様、セメント種類および水セメント比の異なる配合でモルタル・コンクリート供試体を作製する。作製した供試体について、5mass%濃度の硫酸ナトリウム水溶液に浸漬し外部硫酸塩劣化を導入する。また、最高温度90℃の温度履歴を与えた後に水中養生を行うことにより、DEFによる劣化を導入する。異なる劣化を発生させ、その際の供試体の寸法変化(膨張率)を測定することによって、エトリンガイト二次生成に伴う膨張性状を把握する。加えて、圧縮強度および静弾性係数を取得し、劣化が生じたモルタル・コンクリートの力学特性の変化挙動を評価する。
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