研究実績の概要 |
2021年度は、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)が共存した場合におけるエトリンガイト二次生成の促進効果について、分析前の試料の乾燥条件の影響を把握することを目的として定量的な評価を行った。具体的には、純薬合成したモノサルフェートに、共存物質としてCaO/SiO2モル比が異なる合成C-S-H、水酸化カルシウム、非晶質シリカ等を質量比1:1として混合し、硫酸ナトリウム水溶液を用いて練り混ぜを行った。練り混ぜ後の試料は、飽和塩溶液を用いてR.H.11%, 33%, 66%, 85%の真空デシケータ内で乾燥させ、XRD/Rietveld解析およびFT-IR測定を実施した。 また、実際のセメント硬化体にDEF(エトリンガイトの遅延生成)を生じさせ、膨張量・圧縮強度・空隙構造の経時変化を実験により把握することを試みた。具体的には、普通・早強・低熱の3種のポルトランドセメントを用いて、水セメント比を40, 50, 60%としてΦ5×10cmのセメントペースト供試体を作製した。最高温度90℃の温度履歴を与えた後に水中養生を行い、材齢が最長で395日となるまで各種測定を実施した。 その結果、いずれの物質が共存した場合においても、湿度低下に伴いエトリンガイトの二次生成量はわずかに減少することが確認され、エトリンガイトは湿度の低下に伴い非晶質化もしくは分解される可能性が示唆された。また、セメント硬化体での検討では、早強セメントを使用して水セメント比を60%とした供試体において早期にDEF膨張が顕在化し、その膨張量も大きくなった。膨張量の増大とともに圧縮強度が低下する傾向も確認され、また空隙量および空隙径分布からは空隙の粗大化が生じていることが認められた。以上のことから、DEF膨張の進行により粗大な空隙が形成され、それに伴い圧縮強度が低下したことが推察された。
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