研究課題/領域番号 |
20K14809
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
柳田 龍平 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (90862326)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 繊維補強鉄筋コンクリート棒部材 / せん断耐荷機構 / せん断耐力評価 |
研究実績の概要 |
本研究では,従来の鉄筋コンクリート(RC)構造部材のせん断耐荷機構の評価方法を繊維補強コンクリート(FRCC)を用いたRC構造部材にも適用し,1.FRCCの種類(骨材の有無や強度や繊維の種類),2.せん断補強鉄筋量,3.部材の形状・寸法,の組合せが部材のせん断抵抗機構の推移に与える影響をはり部材の載荷実験ならびに数値解析から明らかにすることにより,合理的なFRCC部材のせん断耐力評価手法を検討・提案し,短繊維補強した鉄筋コンクリート部材の構造性能評価の高度化の実現に貢献することを目指している. 令和2年度は,鋼繊維を用いたRC棒部材のせん断抵抗機構の評価を目的とした実験的検討を重点的に行った.解析については,既往の文献で示されている繊維補強RC部材の試験結果を再現し得る解析条件を明らかにしたが,せん断耐荷機構については新たに実験を行うことで初めて相互に比較できるようになることから,実験を中心に検討を行うこととした.せん断による斜めひび割れが生じた後のRC棒部材において,ひび割れ面近傍でせん断抵抗を発揮する粗骨材,せん断補強鉄筋ならびに短繊維が部材の破壊機構に与える影響を把握するため,粗骨材の有無,せん断補強鉄筋比,繊維混入率,部材寸法をパラメータにせん断載荷実験を行い,繊維混入率が増大することによるアーチ機構,ビーム機構といったせん断耐荷機構の変化を実験的に明らかにした.また,繊維混入率が2.0%を超えるような超高強度繊維補強コンクリートの力学特性は十分に明らかになっていないことから,これについても実験的に明らかにした.さらに,画像相関法による画像解析を行い,斜めひび割れ開口変位を定量化することで斜めひび割れ面の補強繊維が発揮する引張力に起因したせん断抵抗の推移を明らかにし,粗骨材の有無や繊維混入率がせん断ひび割れ性状に与える影響を確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,繊維補強したRC棒部材を対象とした数値解析的検証と,画像解析を併用した構造実験による実験的検証を並行して実施することで,繊維補強RC棒部材のせん断耐荷機構に寄与する多くの影響要因について明らかにするとともに,そのせん断耐力評価手法の提案につなげる研究計画としている. 令和2年度は,はじめに非線形FEMによるパラメトリック解析からせん断抵抗機構を大略的に把握することを予定していたものの,文献調査の結果,解析結果の妥当性を確認するためには実験が必要であったことから,まず実験的検討を実施することとし,次年度に行う予定であった部材寸法がせん断耐荷機構に与える影響の検討を先行して実施した.実験の結果,各パラメータがせん断耐荷機構に与える影響を把握できたことから,次年度以降にこの再現解析を行うことにより解析結果の確からしさを検証でき,より広範囲なパラメータによる耐荷機構の分析が可能になるものと思われる.解析に関する成果は当初予定より遅れているものの,実験については次年度予定のものを先行して実施できており,また,画像解析を用いて繊維補強コンクリートのひび割れ伸展性状を詳細に捉えることでひび割れ面に存在する繊維の引張抵抗を算出することについても検討を進めており,これに関する論文も投稿中である.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,数値解析的検証を中心に検討を進めることとするが,部材寸法がより実構造部材に近い状態での実験的検証は試験体数が少ないことから,特に寸法が大きな試験体を対象とした実験的検証も並行して実施する.数値解析的検証では,パラメトリック解析により繊維補強RC部材のせん断抵抗機構への影響因子を明らかにし,前年度の実験結果を用いて解析結果の妥当性を確認する.解析結果,載荷実験の画像解析結果等を相互に比較・検証することによって,繊維混入率やコンクリート中の骨材の有無,鉄筋量,せん断スパン比,部材高さがせん断破壊時の損傷の変化に及ぼす影響について検討を進める予定である.
|