本研究では,1.FRCCの種類(骨材の有無や強度や繊維の種類),2.せん断補強鉄筋量,3.部材の形状・寸法,の組合せがRC棒部材のせん断抵抗機構の推移に与える影響をはり部材の載荷実験ならびに数値解析から明らかにすることにより,合理的なFRCC部材のせん断耐力評価手法を検討するための知見を蓄積し,短繊維補強した鉄筋コンクリート部材の構造性能評価の高度化の実現に貢献することを目指してきた.令和4年度は,圧縮強度レベルが100~150N/mm2程度のせん断補強鉄筋を持たない高強度繊維補強RC棒部材について,斜めひび割れ面で繊維が受け持つせん断抵抗がはりのビーム作用などのせん断耐荷機構に与える影響について検討するとともに,圧縮強度レベルが300N/mm2以上となるせん断補強鉄筋を持たない超高強度繊維補強RC棒部材の繊維混入率やプレストレス量がせん断耐荷機構に与える影響について検討を行った.せん断補強鉄筋を有する部材と異なり,せん断補強鉄筋を持たない部材では,はりのビーム作用と繊維が斜めひび割れ面で受け持つせん断抵抗が一致しないことが明らかとなった.また,せん断補強鉄筋がない場合は斜めひび割れ発生後にビーム作用によるせん断抵抗が徐々に消失する一方で,高強度繊維補強RC部材の場合には斜めひび割れ発生後も繊維によるせん断抵抗が増大すること,圧縮強度レベルが300N/mm2の繊維補強RC棒部材においては,繊維混入率の変化によってせん断破壊モードが変化し,特に混入率が大きい場合ならびにプレストレスを受ける場合においてはせん断圧縮破壊モードとなる傾向にあることを明らかにした.以上の成果と前年度までの検討により,コンクリートの圧縮強度レベルの違い,FRCCを用いたRC部材に特有のパラメータや載荷条件などがそのせん断耐荷機構に与える影響について検討することができた.
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