研究課題/領域番号 |
20K14810
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮地 一裕 岐阜大学, 工学部, 助教 (90810789)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 画像色解析 / 健全度評価 / 錆色分布率 / 吊形式橋梁ケーブル / Digital Image Analysis / Appearance evaluation / Rust Color Distribution / Suspended Bridge Cables |
研究実績の概要 |
本研究では,吊形式橋梁ケーブルに用いられる高強度亜鉛めっき鋼線(以下,ワイヤ)を対象に,腐食ワイヤを特徴付ける錆色に着目し,画像色解析システムを取入れることで錆色分布率として定量的に把握できるかどうかを検討した.2020年度は,次の2点を中心に実施した.
①まず,直径5 mmのワイヤ試験体を用い,腐食促進試験を実施した.本試験体の仕様は主に中・長スパンの斜張橋や吊橋などの吊形式橋梁ケーブルに用いられているものと同一であり,ワイヤ表面には亜鉛めっき331 g/m2(めっき厚:約50 μmに相当)が付着されている.腐食促進試験は,塩水噴霧試験法により実施し,腐食度合いの状況を比較するため,2段階の腐食レベルA・B(腐食レベルA:1008時間,腐食レベルB:2520時間)を設定した.
②腐食促進試験後,デジタル画像色解析システムFeelimage Analyzer (Viva computer社製)を用いて,デジタルカメラで撮影した腐食ワイヤの外観画像に対象とする錆色がどの程度分布しているかを表示および分類した.本研究では,既存のFeelimage Analyzerに色範囲を設定および分類できるシステムを追加開発することで,錆色分布率の定量化に特化した解析を可能とした.本解析システムでは,画像内の全ピクセルが,色を定量的に表す体系であるマンセル・カラー・システム(以下,マンセル)の3要素:色相H(Hue),明度V(Value),彩度C(Chroma)で3次元表示される.対象とする錆色は,ワイヤ表面の亜鉛めっき特有の白錆および地鉄特有の赤錆の2種類とし,各色範囲(白色範囲・赤色範囲)を上記のマンセルから設定することで白錆・赤錆領域を分類した.これにより,各腐食レベルA・Bにおける錆色分布率を定量的に把握することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画像色解析システムを取入れることで,橋梁用ケーブルに用いられるワイヤの腐食状況を,錆色分布率として定量的に把握することが可能となった.また,ワイヤの腐食表面形状測定についても,申請者独自の測定手法の構築を完了している.これらによって,2021年度に遂行する予定である腐食ワイヤにおける「表面形状と疲労強度の相関の解明」に取り組むための準備が整った.したがって,研究はおおむね順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
腐食レベルの更なる分類や試験体数の増加に伴いデータのバラつきが大きくなることが予想されるため,今後より多くの腐食レベル・試験体数において腐食促進試験および画像色解析を実施する予定である.また,各腐食レベルの錆色分布率を解析後,申請者独自の腐食ワイヤ表面形状測定手法により,腐食ワイヤの表面形状特徴を把握する.さらに,疲労試験を行い破断するまでの余寿命を求め,腐食表面形状と疲労強度低下の相関性を捉え,それを錆色分布率との相関を考慮した評価基準として確立することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
(2020年度における未使用額が発生した状況) 2020年度は,画像色解析システムの開発を行い,その解析システムによる結果を基に錆組成との相関性を究明する予定であったが,世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,計画を変更し画像色解析システムの開発を中心に行うこととしたため,未使用額が生じた.また,学会発表や研究打ち合わせ等が含まれる旅費を殆ど執行しなかった. (2021年度における未使用額の使途内容) 今後,室内試験を充実させる,かつ,試験体数を増やす必要もあるため,2021年度に消化する予定である.
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