研究課題/領域番号 |
20K14810
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
宮地 一裕 岐阜大学, 工学部, 助教 (90810789)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 吊形式橋梁ケーブル / 腐食 / 環境遮断剤 / 腐食調査 / Suspended Bridge Cables / Corrosion / Isolation Paint / Corrosion investigation |
研究実績の概要 |
本研究では,吊形式橋梁ケーブルに用いられる構造用ストランドロープ(以下,ロープ)を対象に,①環境遮断剤を用いた腐食抑制効果の検討,②山間部に位置する吊橋主ケーブル一般部を対象とした実験的腐食調査の2点を実施した.2021年度に実施した内容を以下に示す.
①本研究では,イオン分子等を透過させない環境遮断剤を用いた橋梁ケーブルの腐食抑制効果を検討した.小中規模吊橋の主ケーブルやハンガーロープにも使用されているロープを試験体に使用し,環境遮断剤の表面塗装の有無により腐食抑制効果を比較・調査した.塩水噴霧試験法によって腐食促進試験を実施した結果,無塗装試験体外観に鉄特有の赤錆の発生が確認されたが,塗装試験体に錆は確認されなかった.しかし,試験進行中に環境遮断剤の塗膜割れおよび割れの進行が確認された.また,無塗装および塗装試験体のEPMAによる切断面における腐食生成物の元素分析結果において表面から内部への腐食状態を確認した結果,無塗装試験体では表面から内部にまで錆の進行が確認された.一方,塗装試験体では内部への錆がほとんど確認できず,健全性を保っていたことが分かった.さらに,環境遮断剤が外側ストランドの半分以上まで浸透していることが分かり,施工性においても優れていると考えられるが,ロープ中心部までの浸透が確認されていないため,更なる浸透性の向上および充填工法が必要であると考えられる.
②本研究では,山間部に位置する吊橋主ケーブル一般部において,ケーブル上面側に偏って腐食する現象に着目し,その腐食機構の解明を目指す.模擬ロープを用いた腐食環境調査および腐食促進試験を実施した結果,ロープ表面では亜鉛めっきの腐食速度が最も高くなる温度域に達する期間があることが分かった.また,降雨や結露によってロープ上面に残留しやすい水分が日中に熱せられ,上面のみ偏って腐食する可能性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,①の環境遮断剤を用いた腐食抑制効果の検討において,環境遮断剤のロープへの適応性および施工性にも優れていることが分かった.ただ,ロープ中心部までの浸透が確認されていないため,更なる浸透性の向上および充填工法の考案が必要であると考えられる.
また,②の山間部に位置する吊橋主ケーブル一般部を対象とした実験的腐食調査において,供用される吊形式橋梁ケーブルは,日射・降雨・結露などの腐食要因が揃うとケーブル上面に偏って腐食する傾向があることを見出した.
上記の研究成果により,吊形式橋梁用ケーブルへの腐食抑制効果の向上に加えて,ケーブルの腐食発生機構の傾向を把握できた.したがって,研究はおおむね順調に進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では,吊形式橋梁用ケーブルへの腐食抑制効果の向上に加えて,ケーブルの腐食発生機構の傾向を把握できた.それらに加えて,実際の環境データおよび腐食促進試験結果から,実ケーブルの腐食発生機構の再現性の向上を見出した.今後は,本研究成果によって得られた腐食条件を活用し,点検技術・維持補修対策の高度化に繋げるための腐食促進試験法の再現性の向上に努める予定である. また,2020年度に実施した画像色解析システムを取り入れた錆色分布率解析による錆色の定量化技術において,今後より多くの腐食レベル・試験体数において腐食促進試験および画像色解析を実施する予定である.また,各腐食レベルの錆色分布率を解析後,申請者独自の腐食ワイヤ表面形状測定手法により,腐食ワイヤの表面形状特徴を把握する.さらに,疲労試験を行い破断するまでの余寿命を求め,腐食表面形状と疲労強度低下の相関性を捉え,それを錆色分布率との相関を考慮した評価基準として確立することを目指す.
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