本研究では,実際の地震被災現場状況により部材に表出する損傷を確認できない可能性が高いため,骨組の崩壊機構の特定が建物の残存耐震性能評価結果に与える影響を明らかにすることを主目的としている。 そこで,研究実施一年目(令和2年度)には主にRC柱や梁部材における損傷量と変形量の相関関係について検討し,RC造部材の損傷度と塑性率の相関モデルを提案した。 研究実施二年目(令和3年度)には,非構造部材(二次壁)を有する梁降伏型RC造架構の静的載荷実験結果に基づき,異なる崩壊機構を形成する梁降伏型RC造架構の残存耐震性能について検討した。また,部材の曲げ耐力比,架構の層数およびスパン数などをパラメータとした多層架構の解析結果に基づき,「調査者の視認結果に基づき想定された崩壊機構と真の崩壊機構との差異」および「調査可能な部材数の多少」が耐震性能残存率の評価結果の精度に与える影響を定量的に把握した。 研究実施三年目(本年度)には,まず研究実施計画の通りRC造建物の残存耐震性能評価における精度向上対策として,天井などにより損傷確認が難しい梁部材の損傷度判定方法を提案した。また,建物の残存耐震性能評価における二次壁のエネルギー吸収能力およびその周囲架構への影響(例えば,想定外崩壊機構の形成など)の取り扱い方法も提案した。最後に,前年度と同様に多層架構の解析を行い,更に既実施したRC造多層架構の振動台実験結果などを加え,上記の提案手法の妥当性について検証した。
|