研究課題/領域番号 |
20K14820
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加村 晃良 東北大学, 工学研究科, 助教 (80761387)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スレーキング / 盛土 / 内部浸食 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績の概要は以下のとおり。1)および2)の成果については,「スレーキング性を有する高速道路盛土の劣化を考慮した維持管理手法に関する提案」というタイトルで地盤工学会支部表彰(技術的業績部門)最優秀賞を受賞した。また,4)の成果の一部は,国際会議にて発表した。 1)前年度採取したスレーキング性を有する試料(秋田市にて採取の泥岩)と対象に,各種室内試験を実施した。試験データの信頼性を向上させるため,排水/非排水条件ともに複数条件で試験を実施し,スレーキングの進行に伴う変化を捉えることができた。特徴的な結果として,スレーキングを生じる前には正のダイレイタンシー特性を示す試料が,スレーキングの進行に伴って負のダイレイタンシーを示すようになり,せん断中に有効応力が減少することが確認された。 2)内部浸食に関連して,スレーキングに伴う粒度変化を段階的に捉えた。従来の試験法と比較し,スレーキングの過程がより捉えやすい方法を新たに考案し,粒度の変化を定量的に示すことができた。スレーキングが進行する過程では,今回用いた試料(秋田市にて採取した泥岩)の場合,細粒分の増加が支配的であることが明らかとなった。 3)上記結果を踏まえて,スレーキングに伴う土粒子の破砕表現を数値解析モデルに組み込んだ。粒子単体では,挙動を概ね表現することができた。しかし,土要素としての境界条件の設定やパラメータの設定に関しては,次年度へ課題を残した。 4)スレーキング性盛土への対策工の実装を見据え,内部浸食対策の基礎的検討として,斜面内排水工と内部浸食による排水孔目詰まりの関係を評価した。模型実験と数値解析によって,目詰まりが斜面内排水工におよぼす影響を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)室内試験により,スレーキングに関する新たな知見を得ることができた。従来の試験法だけではなく,スレーキングの過程がより捉えやすい粒度計測方法を新たに考案し,取り入れることで,盛土の劣化シナリオの検討を効果的に進めることが可能となった。 2)地盤材料のスレーキングが盛土の内部浸食にどのように影響を与えるかを解明するためには,スレーキングの進行とせん断挙動の変化,そして地下水の影響を含めた評価が求められる。今年度は,初年度の成果をさらに発展させて,排水/非排水挙動それぞれの結果を積み上げることができた。 3)スレーキングに伴う土粒子の破砕表現を数値解析モデルに組み込むことはできたが,土要素としての境界条件の設定やパラメータの設定に関しては,次年度へ課題を残したため,計画以上の成果とはいかなかった。 4)一方で,スレーキング性盛土への対策工の実装を見据え,内部浸食対策の基礎的検討として,斜面内排水工と内部浸食による排水孔目詰まりの関係を評価できた。このことは,当初見込んでいた成果に対して上乗せできた部分である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年へ向けて,実験結果に基づく数値解析モデルを用いて有意な数値実験を実施し,盛土の劣化シナリオと内部浸食の評価指標を提案できるよう,準備を進める計画である。なお,精緻なモデリングに基づく個別要素解析は計算コスト(時間)が高いことから,それを補うために,連続体ベースでできる検討は有限要素解析を併用して研究を遂行する。また,当初計画からさらに進めて,内部浸食対策の実装につながるよう,効果的な斜面排水工の提案も合わせて実施する予定である。
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