研究課題
令和3年度は、亀裂内部構造を予測する数理モデルを構築した後、熱・水・応力・損傷・化学連成解析に実装し、本研究で想定していたシミュレータ開発を一通り完了した。具体的な実施内容を以下に述べる。①まず、生成された岩石亀裂内の接触部割合を開口幅から予測する数理モデルを定式化し、その妥当性を室内実験との比較から確認することができた。なお、昨年度構築済みの連成計算システムに組み込まれている解析手法FDEMは、岩石亀裂生成時の亀裂開口量を破壊力学に基づき直接計算できるため、FDEMと上述した数理モデルとの連結により、生成された亀裂の開口幅と接触部割合が算出可能となる。②続いて、FDEMの計算精度の更なる向上を目し、FDEMの構成要素であるCohesive Zone Modelに関する改良を行った。具体的には、FDEMで一般的に用いられているIntrinsic Cohesive Zone Model (ICZM)よりも高い精度で破壊前の応力・変形計算を可能とするExtrinsic Cohesive Zone Model (ECZM)を実装した。③続いて、構築した数理モデル、改良したFDEM、熱・水・応力・化学連成解析モデルの三者を昨年度構築した連成計算システムを基に統合した。これにより、本研究で目的としていた、亀裂生成解析→亀裂内部構造予測→熱・水・応力・化学連成解析という、地層処分時の岩盤内亀裂の透水特性を予測する上で重要な一連のプロセスをシームレスに解くシミュレーション技術が構築された。また、構築したシミュレータを用いて、結晶質岩が分布する深地層への高レベル放射性廃棄物処分を想定した100年間の長期予測解析を実施した結果、廃棄体処分空洞掘削に伴い多数の亀裂が生成・進展した後、圧力溶解という化学現象が生じた亀裂においては長期(100年間)に渡り透水性が大幅に減少する挙動が確認された。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
材料
巻: 71 ページ: 206~213
10.2472/jsms.71.206
IOP Conference Series: Earth and Environmental Science
巻: 861 ページ: 032053~032053
10.1088/1755-1315/861/3/032053
Japanese Geotechnical Society Special Publication
巻: 9 ページ: 71~76
10.3208/jgssp.v09.cpeg045
International Journal of Geomechanics
巻: 21 ページ: 1-1~1-13
10.1061/(asce)gm.1943-5622.0002220
http://www.civil.eng.osaka-u.ac.jp/soil/