研究課題/領域番号 |
20K14828
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
伊藤 真一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (20825690)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | データ同化 / 土柱法 / 不飽和浸透特性 / 保水性試験 / 水分特性曲線 / 融合粒子フィルタ / ベイズの定理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,簡易かつ短時間で不飽和浸透特性を推定するために,データ同化を導入した新たな保水性試験方法を提案し,その妥当性を検証することである。本年度の具体的な実施内容と研究成果を以下に示す。 (1)簡易に実施可能な土柱法による保水性試験装置を作製し,キャリブレーションを行った土壌水分計を設置することで,土柱法における体積含水率の経時変化の計測データを取得可能であることを明らかにした。 (2)土柱法と融合粒子フィルタによるデータ同化を組み合わせた不飽和浸透特性推定手法を提案した。提案手法を用いると,土試料として豊浦砂と串良川堤体土を用いた場合の体積含水率の計測データを良好に再現することができ,それぞれの土の特徴(豊浦砂は保水性が低く透水性が高い,串良川堤体土は保水性が高く,透水性が低い)を表した水分特性曲線を推定できることを明らかにした。 (3)加圧板法によって推定された豊浦砂の水分特性曲線と本研究の提案手法によって推定された豊浦砂のそれを比較すると,その傾向は概ね一致することがわかった。このことから,豊浦砂という材料を用いた場合に関しては,提案手法の妥当性を確認することができた。 (4)本研究の提案手法は,試験装置の作製が容易であり,短時間での試験実施も可能である。これと計測データを十分な精度で再現できること,加圧板法によって得られた水分特性曲線と同等の水分特性曲線を推定できることを考慮すると,提案手法は不飽和浸透特性推定手法として有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最も重要なテーマであった「テーマ1:データ同化を導入した土柱法による保水性試験方法の提案」に関して,土柱法による試験装置の作製とその計測データに基づくデータ同化によって短時間での不飽和浸透特性の推定が可能であることを示すことができた。また,豊浦砂という特定の材料に関してはという限定付きではあるが,加圧板法によって得られた水分特性曲線と提案手法によって得られた水分特性曲線が概ね一致するという結果を得ることができ,提案手法の妥当性を確認することができた。以上のことから,本研究の目的に対して,本年度の進捗状況としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果によって「テーマ1:データ同化を導入した土柱法による保水性試験方法の提案」は十分な成果を得ることができたため,次年度では,「テーマ2:提案する保水性試験方法の妥当性の検証」に取り組む。具体的には,粒径加積曲線の異なる様々な土試料を用いて実験を行い,データ同化事例を拡充する。さらに,豊浦砂以外の試料を用いた場合の加圧板法による保水性試験結果との比較も実施する予定である。その他には,土柱法が土のマクロ的な不飽和浸透特性を推定する手法であることを活用して,保水性の異なる二層地盤で発生するキャピラリーバリアのメカニズムについても考察する予定である。
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