土中の水分状態を把握するためには,不飽和浸透特性(水分特性曲線,不飽和透水係数の関数)の推定が重要である。水分特性曲線を推定するための保水性試験は,試験に要する時間が長いことや試験装置が複雑であることなどが課題として指摘されている。本研究では,データ同化を導入した新たな保水性試験方法の提案とその妥当性の検証を目的として,①データ同化を導入した土柱法による保水性試験方法の提案と②提案する保水性試験方法の妥当性の検証を行った。本研究によって得られた知見は以下の通りである。 粒度分布の異なる6つの土試料を用いた土柱法による試験を行って得られた計測データに対して融合粒子フィルタによるデータ同化を適用することで,全ての試料に対して計測データを良好に再現可能な不飽和浸透特性を推定できることがわかった。 提案手法を用いた場合,従来の保水性試験と比較して,簡易かつ短時間(試験準備から後片付けまで含めても半日以内)での不飽和浸透特性の推定が可能であることがわかった。 提案手法によって推定された水分特性曲線は,加圧板法や水頭法による他の保水性試験を行なって得られた水分特性曲線と実務上,十分に類似していることがわかった。 以上のことから,本研究の提案手法は簡易かつ短時間で不飽和浸透特性を推定するための新たな手法として有効であることが明らかになった。
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