研究課題/領域番号 |
20K14831
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩崎 理樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70727619)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 適合細分化格子法 / 河床変動 / 数値計算 / 洪水氾濫 / 流木 / 土砂供給 |
研究実績の概要 |
空間スケールの異なる流れ-地形変動過程を同時に計算するAdaptive Mesh Refinement(AMR)法を組み込んだ洪水流,河床変動モデルを構築した.既存の平面二次元河床変動モデルに対してAMRライブラリであるPARAMESHを用いることで,格子解像度を時空間的に変化させるモデルを開発し,これを用いて札幌市中心部を模したモデル領域について性能を評価した.建物群を有する複雑な地形を有する場においても,洪水流の広がりとともに,格子解像度が適切に変化する手法について検討し,計算精度を低下させずに高速に洪水氾濫流を計算可能となることを示した.
流域における複合災害要因として近年着目されている流木移動について,平面二次元モデルから得られる流れ,河床変動過程を用いて計算するラグランジェ的流木追跡モデルを開発し,洪水時に砂州上に流木が堆積する過程について検討を行った.この結果,網状流路といった水深が比較的浅く,流木が河床と接する可能性が大きいような場では,上流から供給された流木は高い割合で砂州上に貯留され,下流にはそれほど流下しないことを明らかにした.これは,流域内における流木収支にとって重要となる可能性があり,流木といった流域内の災害リスクとなり得る要素についてモデル化することができた.
河川上流からの土砂供給はある地点の河岸侵食や河床変動に強く影響する一方,その影響時間は範囲については明確に区別する必要がある.このような空間的に土砂供給の影響が異なることを明確にするために,実河川の河道条件,流量ハイドログラフを単純化した場において,非定常ハイドログラフと給砂条件を変化させた河床変動解析を実施し,1洪水といった時間スケールにおいては,上流端の給砂条件の違いは及ぼす範囲は供給位置付近に限定されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたAMRを組み込んだ洪水氾濫モデルについて構築することができた.これをベースとして,河床変動についても既に開発済みであり,次年度以降,開発したモデルを用いることで,時空間スケールの異なる現象を同時に解析可能なシームレス広域水土砂移動モデルを構築する.さらに,近年新たな流域内の災害リスクとなる流木移動モデルについても構築することができ,これをモデルに組み入れることで,より複合的な流域リスクを評価可能となると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
構築したモデルを2016年北海道豪雨時で見られたような広域水土砂移動,及びそれに誘発される災害について適用してモデルの検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19により予定していた国内外の会議がオンライン化となり,その分については未執行であるが,オンライン会議に多数参加することで,当初の目的は達成されている.契約の関係で購入に時間を要した計算機PCを次年度早々に購入することで,本年度に構築したモデルの高速化と大規模化を推進する.
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