研究課題/領域番号 |
20K14834
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀬戸 里枝 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70799436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 衛星マイクロ波観測 / 陸域 / 雲降水粒子 / より分け推定 / 鉛直分布推定 |
研究実績の概要 |
陸域の雲降水粒子の衛星マイクロ波による観測は、陸面からの強く不均一な射出が雲のシグナルを相対的に弱めてしまうことや、陸面と大気の間での放射伝達の特性がよくわかっていないことから、一般にあまり行われておらず、行われる場合でも、雲のシグナルが比較的弱い周波数(36GHz)のみで実現することは困難であった。そのため、これまでは自らの手法においても、雲のシグナルの強い高周波数(89GHz)のマイクロ波衛星観測を主な観測として用いて、陸域の雲降水粒子の水分量の推定を行ってきた。 本研究課題の1年目では、高周波数による陸域雲水量の推定手法における、大気-陸面結合系での同時推定のアルゴリズムの精度向上により、雲のシグナルの比較的弱い36GHzの周波数のマイクロ波衛星観測のみで、雲降水系内の液相の総水量を推定できるシステムを開発した。更に、推定した液相の総水量を拘束条件として、同じく36GHzマイクロ波衛星観測の水平偏波と垂直偏波の差を用いることで、液相の総水量を雲水と雨滴の水量に分配することにも成功した。総水量、雲水量と雨滴水量の推定値はそれぞれ、衛星搭載雲レーダーによる独立したプロダクトを用いて評価を行い、妥当な値であることが示された。36GHzのみによって液相の雲水量と雨滴水量のより分け推定を可能としたことで、次のステップとして、固相の雲降水粒子(雲氷、霰など)のシグナルを含む89GHzの観測情報から、固相の水量を推定することが可能となる。 また、ひまわり8号による観測と気温プロファイルから雲頂高度を簡易的に推定して、雲水量推定の際の拘束条件に設定し、より現実的な鉛直分布の推定を行うためのアルゴリズムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、4年間で雲降水粒子のより分け推定手法の開発を行う計画であったが、計画のおおむね半分以上が既に完了している。
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今後の研究の推進方策 |
液相の水量の推定とより分けが、36GHzのみの利用で可能になったことで、89GHzの観測情報を固相の水量の推定のために利用することが可能となった。今後は、固相粒子の有無による大気上端の放射輝度温度の値(放射伝達モデルによる算出値)の変化と89GHzの観測情報から、固相の水分量の推定手法の開発に着手する。固相の放射伝達計算は液相と比べて複雑になるため、放射伝達モデルの精度の検証も必要になると考えられる。これについては、地上マイクロ波放射計との同時観測の利用や、より高精度な放射伝達モデルとの比較などを行って、検証することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対策の影響で、国内外の出張が制限されたため、当初参加を予定していた学会に不参加、またはオンライン開催などへの変更があり、現地観測などに行くことも難しく、未使用額が生じた。 コロナの状況が改善され、学会の現地開催が行われれば積極的に発表に参加するとともに、論文の投稿・受理された論文のオープンアクセス化などで、成果発表に使用する計画である。また、開発した手法のより詳細な評価のために、現地観測も行いたいと考えている。
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