研究課題/領域番号 |
20K14837
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
趙 容桓 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00761082)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 混合土砂 / 細粒分の抜け出し / 乾燥かさ密度 / 干潟 / 細粒分含有率 / 混合土砂モデル |
研究実績の概要 |
天然・人工干潟における粘土成分の動的管理のためには,砂と細粒分(粘土,シルト)からなる混合土砂の移動特性の究明が重要である.本研究では,混合土砂の乾燥かさ密度に着目し,砂と細粒分(カオリン)からなる混合土砂における土砂割合(含有率)が混合土砂の移動特性に及ぼす影響を検討する水理模型実験と混合土砂モデルの改良を実施した. 混合土砂の乾燥かさ密度実験においては,初期試料の攪拌有無によって,細粒分の見かけの体積増加と初期圧密の進展度の違いが確認され,乾燥かさ密度に影響を及ぼすことが判明した.また,従来の1次圧密終了後の乾燥かさ密度の算定式を基に,本実験における細粒分と砂それぞれが100%存在するときの乾燥かさ密度を適用した乾燥かさ密度と細粒分の含有率の関係式が得られた. 一様流作用下における細粒分の抜け出し特徴に関する実験では,高細粒分含有率の混合土砂において,ある限界深さまで圧密過程での間隙水の充填と一様流による底面せん断応力の作用によって,底質の液状化及び分級が発生し,底質内部からの細粒分の抜け出し現象が生じうることが示唆された.また,低細粒分含有率において,ある閾値以上の底面せん断応力が作用する場合,作用時間によって内部から浸透流による細粒分の抜け出し現象が発生することを確認した.なお,混合土砂の乾燥かさ密度実験で得られた細粒分含有率と乾燥かさ密度の関係式を利用し,本研究で用いた混合土砂に対する限界Shields数が得られた. 数値計算においては,混合土砂モデルに一様流作用下での細粒分の抜け出し実験で得られた乾燥かさ密度の変化による限界Shields数が適用されるように改良した.また,水理学実験の再現計算を実施した結果,細粒分含有率が高くなると細粒分の抜け出しが遅延されることで混合土砂の地形変化が減少されることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究目標である混合土砂の土砂割合(細粒分含有率)が混合土砂の移動特性に及ぼす影響について,細粒分含有率の変化による混合土砂における細粒分の抜け出し特性に着目した水理模型実験を実施した.海外の様々な研究では,砂と細粒分(粘土+シルト+海洋有機物)からなる混合土砂の移動限界が混合土砂の乾燥かさ密度(Bulk density)に依存することが判明しており,本研究においても乾燥かさ密度の観点から検討を行った.その結果,実験に用いた土砂の乾燥かさ密度実験を実施することで,細粒分含有率の変化による乾燥かさ密度を算定する評価式が得られた.また,混合土砂モデルにおいて,既存のモデルでは,細粒分の変化によって混合土砂の空隙が変化する手法になっていたため,細粒分含有率の変化による乾燥かさ密度の評価ができなかった.そのため,細粒分含有率の変化によって実験から得られた乾燥かさ密度の評価式が適用できるように数値モデルを改良した.その後,波浪場における混合土砂の地形変化を検討した水理模型実験の再現計算を実施し,実験と類似な傾向が確認された.したがって,当初の研究計画の通りにおおむね遂行できたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では,砂と礫からなる混合土砂の移動特性を砂と細粒分からなる混合土砂の計算手法を改良して評価できるように数値手法を開発する.当初計画では,2020年度と同様に一様流における水理模型実験を実施し,砂含有率による礫の移動限界変化を検討する予定であった.ただし,混合土砂モデルにおいて,地形変化を計算するためには,斜面崩壊による混合土砂の地形変化の再現計算が重要であることがわかった.そのため,当初の計画した実験の前に,水中における砂と礫からなる混合土砂の斜面崩壊実験を実施し,砂含有率の変化による水中での安息角と場所による砂の含有率の変化を測定する.その後,混合土砂モデルの改良・再現計算によってモデルの精度を検討する.斜面崩壊における数値計算の妥当性が確認されてから,当初研究計画である砂と礫からなる混合土砂の移動限界実験を実施する予定である.
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