研究課題/領域番号 |
20K14841
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研究機関 | 国土技術政策総合研究所 |
研究代表者 |
田端 幸輔 国土技術政策総合研究所, 河川研究部, 主任研究官 (90756678)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 堤防 / 基盤透水層 / パイピング破壊 / 浸透流 / 粒度分布 / 空隙率 |
研究実績の概要 |
R3年度は、パイピング進行を表現するためのモデル構築を実施した。各粒径の土砂移動については、浸透流速がRichardson & Zakiの干渉沈降速度を超えた場合に生じるものとし、土砂の移動速度は浸透流速と同じであると実用上仮定した。また、土砂の連続式により、土砂の抜け出しに伴う空隙率の増大を表現した。これにより、多孔質体内の粒子の選択的抜け出しと、これに伴う空隙率・粒度分布の時間変化、浸透流の集中・発達を表現できるモデルを構築した。構築したモデルを模型実験データに適用し、用いた仮定の妥当性、適用限界等を確認した。 R4年度は、R3年度に構築したモデルと、実務で使用される手法との比較を行った。なお、実務で使用される手法とは、20%粒径の値から経験的に透水係数を推定した上で、Darcy則により浸透流速を、Richards式により圧力水頭をそれぞれ解析する一般的な手法である。これにより、土砂輸送が生じるまでの段階では、本研究で構築したモデルと一般的なモデルとで大差はないが、土砂輸送が生じ始めると、粒度分布と空隙の場所的な変化によって、流れと圧力分布が急激に変化することから、土砂輸送考慮の有無はパイピング発生危険性の評価結果に大きな影響を及ぼすことが確認された。 また、堤防下の基礎地盤の土層構造、粒径、外力(河川水位)を変化させたときに、堤防法先からの噴砂量及びパイピング発達距離がどのように変化するのかを体系的に調べ、堤防破壊の危険性を高める可能性のある要因について検討を行った。これにより、現地堤防のパイピング破壊危険性を評価する上で見落とされていた点や、新たに調査すべき項目について整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
構築したモデルにより、従来法との違い、浸透流による土砂輸送を考慮することがパイピング発生危険性に及ぼす影響が明確になってきた。一方、九州大学のスーパーコンピュータを利用申請し活用していたが、システム更新により2022年度末に使用できない期間があったため、検討状況としてはやや遅れたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
パイピング対策としてドレーン工やリリーフウェル工等を対象とし、基盤層からの砂の流 出量の軽減や、噴砂発生箇所をなるべく堤防から遠ざけるために必要な対策工諸元を検証する。また、パイピングに対する安定性の観点から,堤体そのものを大きくすることの重要性、意義についても考察し、研究全体をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19により出張を取りやめたため当初予定していた旅費等を使用できず,ソフトウェア購入等に回したが,全額使用できなかったため.繰越額は,印刷消耗品等に用いる予定である.
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