交通事故総合分析センターのミクロデータを用いて歩行者および自転車乗員の対四輪車衝突における頭部傷害に関する分析を実施した.その結果,衝突速度が高い場合には歩行者保護性能が高いとされるウインドシールドとの衝突であってもAIS 3以上の脳傷害が発生し得ることが確認された.また,歩行者,自転車乗員のいずれの場合においても,加害部位と発生する傷害の内容との間に関係性は認められなかった.路面が頭部の加害部位となった事例では衝突速度の平均値が車両が加害部位となったケースよりも低かった.このような事例ではトラックやキャブオーバー車が関与しているケースが多く,前方への押し倒しが原因であったと考えられる. 交通事故時の傷害評価,特に胸部の評価を中心に分析をおこなった.対象とする歩行者,自転車乗員の場合,自動車乗員とは異なり衝撃を受ける方向が単純ではなく,また,様々な向きから負荷を受けるため,それらを考慮した胸郭変形評価指標について人体有限要素モデルを用いた解析によって検討した.小柄女性歩行者とセダン型車両との衝突を再現した衝突シミュレーションを実施し,様々な向きで衝突させた際の挙動や胸郭変形について分析をおこなった.胸郭内のゆがみを定量化した指標を検討した結果,特にひずみが生じやすい上位肋骨の塑性ひずみとは一定の相関が確認された.また,歩行者と車体との衝突時に肋骨を下から突き上げるような挙動が生じることが確認され,今後これを考慮した指標に発展させていく必要があることが確認された.
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