研究課題/領域番号 |
20K14850
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
白柳 洋俊 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10756654)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視線の偏り / 選好判断 / 想起 |
研究実績の概要 |
本研究は,時間的に展開する視覚刺激が記憶の書き換えに影響を及ぼす「Paramnesia効果」に着目し,移動中の歩行者を対象として,空間移動においてParamnesia効果が発現することを実証的に示すことを目的とする.初年度は,空間移動においてParamnesia効果を生じさせる視覚刺激の特徴とその視覚行動の特性に関して検討した.具体的には,第1に,Paramnesia効果を生じさせる視覚刺激として店舗ファサードを例に取り上げ,選好度を統制した店舗ファサード画像への視線の偏り及び選好判断について二者択一強制選好判断課題に基づく室内実験により検討した.その結果,選好判断よりも時間的に先行して,選好判断を下した店舗ファサード画像に対して無意図的に視線の偏りが生じる視線のカスケードが発現していること,ならびにこうした視線の偏りを実験的に操作し,特定の店舗ファサード画像に対する視線を偏らせる程,当該画像への選好度が高まることを明らかにした.第2に,室内実験の成果を踏まえ,実空間において視覚対象への視線の偏りが当該対象への心理的評価に与える影響を検討するため,視線の偏りとして河川の視認性を例に取り上げ,居住付近を流れる河川の視認性が居住地付近で生成された記憶の想起に与える影響についてアンケート調査に基づき実証的に検証した.その結果,水害経験を有する住民であっても河川に対する視認性が高まる程,河川に関する肯定的な記憶の想起が促されることを示した.またこうした視覚対象に付随する肯定的な記憶を想起する程,視覚対象への愛着意識が醸成されることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,空間移動においてParamnesia効果の発現に繋がる視覚刺激を明らかにした.しかし,視覚刺激が及ぼすParamnesia効果,すなわち,IAR,RIFについては未検討となっている.
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今後の研究の推進方策 |
IAR及びRIFを室内実験により定量的に把握する.さらに実空間におけるIAR及びRIFを把握するとともに,同記憶の歪曲が歩行者挙動に与える影響を把握する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により予定していた国際会議での研究成果発表が一部実施できなかった.次年度は状況を見つつ国際会議に参加するとともに,研究の深化のために必要な物品の購入を予定している.
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