本研究は、空間移動時の歩行者を対象として、視覚刺激が記憶の歪曲に影響を及ぼすParamnesia効果が発現することを室内実験に基づき検証した。具体的には、視覚刺激の対象を歴史的建造物に絞った上で、記憶情報の類似性を高めるように誘導する記憶の統合に着目し、第1に、意匠的特徴が異なる歴史的建築物について記憶の統合を実施しない場合は、特定の歴史的建築物の想起が抑制する検索誘導性忘却が生じる、第2に、記憶の統合を実施する場合は、当該建築物の想起が促進する検索誘導性促進が生じるとの仮説を措定し、同仮説を検索誘導性パラダイムに基づき検証した。実験の結果、2つの仮説を支持する結果が得られた。
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