本研究は,動的に変動する事故リスクを考慮した交通マネジメントの実装を念頭に,交通事故リスクをリアルタイムに予測可能なディープラーニングモデルの構築と,実ネットワークでの検証を目指した.2020年度実績において事故リスク予測モデルへの入力変数選択を含むモデル構築を行い,2021年度には管制室でのオンライン運用の試行を計画していた.しかしながらコロナの感染状況を考慮し,現場での精度検証について実施計画の立案に留めることとし,今年度はプローブデータから獲得される情報を活用することによるモデルの精度向上に取り組んだ. 今年度の取り組みでは,過年度より構築している畳み込みニューラルネットワーク(CNNモデル)に基づく事故リスク予測モデルに対して,ETC2.0データから獲得される情報を入力することを考え,1) ETC2.0データの適切な時空間集計方法に関する検討,2) ETC2.0データから入手可能なデータ種類による感度分析,の2点を実施した.その結果,1)については,プローブデータから集計可能な情報をCNNモデルに入力する際には,データの種類に応じた最適な時空間集計サイズが存在することが明らかとなった.また,最適集計サイズを用いてプローブデータ情報を入力する場合には,車両感知器情報のみを入力に用いる場合と比べて高精度に事故リスクを予測であることが明らかとなった.2)の検討については,プローブデータから得られる情報の内,交通状態を表すデータについては最適な時空間集計サイズが存在することが明らかになったが,一方で,車両の急挙動を表すカウントデータについては,大きい時空間サイズほど精度が高くなる傾向が確認できた.
|