研究課題/領域番号 |
20K14852
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
大野 暁彦 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (00758401)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリーンインフラ / 輪中 / 文化的景観 / 屋敷林 |
研究実績の概要 |
現地調査と調査データの作成:屋敷林ならびに屋敷や水屋の残存状況が良好で同 一の輪中内に複数の屋敷林が確認できる11輪中98箇所を対象とし、許可のとれた対象屋敷林について、2020年8月20日~2020年12月23日の間に計27回の日程で調査を実施した。 1.現地踏査:すべての事例について現地踏査を行い、現存状況の確認を実施し写真で記録している。 2.樹種調査:高木については調査可能な場合は毎木調査を実施し、それぞれの屋敷林の樹種構成を把握し、屋敷、集落や地域間での違いがあるか分析する。 3.実測調査:調査の許可を得た屋敷林においては、敷地内の実測およびドローンによる写真測量(撮影する枚数は敷地面積にもよるが1か所につき約60枚撮影)を実施している。取得した画像をもとにAutodesk社のReCap Photoを用いてオルソ画像化し、3次元データを取得する。また、ドローンによる撮影が難しい場合は現地調査をおこない、レーザー測量機を用いて補足する。以上の成果からAdobe社のIllustratorを用いて平面図を作成する。国土地理院から取得できる基盤地図情報を参照し、対象地を構成する主屋、付属屋、生垣、屋敷林、石垣、庭木を平面図としてまとめる。また屋敷林や盛土形状の高さ関係が分析できるような簡易な断面図を作成する。また、各屋敷林にドローン測量により得られたオルソ画像をもとに屋敷林の樹種ごとの樹冠面積を明らかにする。 4.空中写真による分析:過去の屋敷林の状況を把握するため、国土地理院が提供する過去の空中写真から屋敷林を抽出する。この時使用する空中写真は、1961年に撮影されたもので、現在国土地理院によって入手できるこの地域の最古のものである。作成された平面図と過去の空中写真から屋敷林の変化を把握する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査に基づくデータ作成と分析から、輪中地域の屋敷林を屋敷地の盛土形状や構成樹種を分析することで輪中地域の全域でみられる屋敷林の特徴を明らかにできつつあり、おおむね順調に進行、次への展開を期待できる成果を得ている。 1.盛土形状 濃尾平野輪中地域にみられる屋敷林はその植栽される盛土形状によって屋敷林の配置が異なることが分かる。盛土形状から「二辺階段型」「一辺階段型」「斜面型」「一段型」に分類することができ、盛土形状の高さに合わせ屋敷林が変化することが明らかとなった。また屋敷林が伐採された箇所では、盛土上の用途が屋敷林からは屋敷畑、ニワ等に変化することから盛土形状が顕著に表れる。 2.樹種 濃尾平野輪中地域にみられる屋敷林には、他地域の屋敷林で多く見られる針葉樹は少なく、タケや広葉樹が利用されている。構成する樹種に輪中間で偏りはない。タケは根張りが良く盛土を補強できるが、繁殖力が強いため、石垣によって盛土を補強している屋敷や局所的に屋敷林を持つ屋敷には植えられず、屋敷地を大きく囲う屋敷林に多くみられる。 以上の調査から得た研究成果は、2021年度から2022年度にかけて環境情報科学センター、日本造園学会などにおいて発表に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.補完調査の必要性:新型コロナウィルスによる影響などもあり、各屋敷内調査が進んでいないため、石垣などの構造物についての調査は十分な調査データが得られていない。2021年度には各屋敷内での実測調査数を増やしていく必要がある。 2.図面資料集のs買うせい:歴史的に形作られてきたにもかかわらず、ほとんどの屋敷林はこれまで十分に調査が行われておらずその実態は不明瞭であっただけに、図面として記録しておく重要性が高い。2020年度までに得た成果をもとに正確な現況図面を作成し、記録しておくことが今後の保全整備にあたり重要な資料となると考える。 3.3次元スキャンデータの解析:本調査で得られた3次元スキャンデータは2020年度において、盛土形状や樹木の高さや配置を把握するにとどまっているめ、今後は得たデータをもとに緑量や土量などの3次元的な解析が求められる。 4.調査対象の拡充:屋敷林と同様に調査対象エリアで大きな森を形成している場所に神社がある。神社の森の形成過程およびその樹種、配植形態を把握することで、屋敷林との共通点ならびに違いが把握でき、輪中地域の屋敷林の特徴をより明確に理解できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウィルスの影響もあり、研究成果の発表や相談などすべてオンラインで実施したため交通費の支出がなかった。来年度において、感染状況に応じて、対面実施の学会発表などがあれば旅費などで使用する計画である。
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