研究課題/領域番号 |
20K14856
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研究機関 | 公益財団法人豊田都市交通研究所 |
研究代表者 |
西堀 泰英 公益財団法人豊田都市交通研究所, その他部局等, 主席研究員 (80531178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | まちづくり / 評価指標 / 歩行者量 / Wi-Fiパケットセンサーデータ / 携帯電話基地局データ / COVID-19 / トピックモデル / ベイズ構造時系列モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,まちづくりの効果を,長期と短期の両方で評価する手法を開発することを目的としている. 長期的視点の評価は,まちづくりに関する指標を東京大学CSISや統計情報研究開発センター,研究対象地域である豊田市役所などから収集した.また,全国の中心市街地活性化基本計画の評価事例を参照し,評価指標として歩行者通行量が最も多く用いられていることを確認した.さらに,豊田市における中心市街地開発の経過を整理した.そのうえで,歩行者通行量と収集した指標を用いて中心市街地の変容と歩行者通行量の変容の関係を分析した.その中間的な成果を東京大学CSIS DAYS 2020で発表し「優秀共同研究発表賞」を受賞した. 短期的視点からの研究は,中心市街地で行われるイベントがCOVID-19感染拡大に伴い軒並み中止となったため計画を変更した.COVID-19感染拡大による中心市街地における人々の活動の変化に焦点を当て,申請者が収集しているWi-Fiパケットセンサー(WPS)データや,携帯電話基地局データなどを用いた研究を行った.WPSデータに機械学習の手法であるトピックモデルを適用してCOVID-19の影響を分析した成果を,第62回土木計画学研究発表会で発表した.その内容を高めて国際会議に投稿した結果,概要査読に合格し,来る2021年6月に発表予定である.また,収集したデータの一部にベイズ構造時系列モデル(bsts)を適用しCOVID-19感染拡大対策の影響を分析した結果を第63回土木計画学研究発表会に投稿した. 長期的な評価の視点で行った研究については,中間的な成果であったが賞を受賞することができたことは,この研究の意義を第三者からも認められたと評価できる.また,COVID-19の影響をトピックモデルやbstsなどの新たな分析手法を適用し評価したことは重要な成果と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まちづくりの現場における評価事例の調査については,COVID-19により文献調査のみの方法で行った.内閣府の中心市街地活性化基本計画のフォローアップに関する報告をもとに整理を行い,評価に用いられている指標には歩行者通行量(平日休日別や一部に自転車通行量を含む)が最も多いことを明らかにした. 豊田市中心市街地では,2008年から継続して歩行者通行量の常時観測を行っている.また,まちの状況を表す指標として,従業者数や夜間人口,建物用途別面積,電話番号件数,商業販売額などのデータを収集した.初年度である2020年は,これらのうち歩行者通行量と従業員数や夜間人口などのデータの関係分析を行い,東京大学CSIS DAYS 2020(2020.12)で発表した. また,COVID-19の感染拡大による人々の活動の変化を,WPSデータや歩行者通行量などのデータを用いて分析し,第62回土木計画学研究発表会(2020.12)で発表した.さらに,その内容をさらに高めた成果を国際会議に投稿した結果概要査読に合格し2021.6に発表予定である.さらに,携帯電話基地局データによる滞留人口を用いたCOVID-19に関する政策提案や技術開発を行う研究会に参加し,共同研究として滞留人口を用いた影響分析を行った成果を,第63回土木計画学研究発表会(2021.6)に投稿した. これらのデータを用いた研究は引き続き行っており,COVID-19の感染拡大対策の実施と人々の活動の変化の関係をさらに明らかにしていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初本研究で着目していた中心市街地における短期的なまちづくり活動(例えばイベント開催や道路空間再配分の実験など)は,COVID-19の影響で開催中止や予定変更などを余儀なくされた.そのため今のところ,短期的なまちづくりの評価はできていない.しかし,COVID-19の感染拡大がまちづくりの根幹を揺るがしている状況を目の当たりにし,かつ,その実態を捉えたデータが手元にあった.そこで研究方針を転換し,短期的な分析の対象をまちづくり活動からCOVID-19による影響に切り替えた.それにより,社会的にも関心が高まっているテーマに対してタイムリーに研究成果を発信することができた. 今年度は引き続き収集したデータを分析し,COVID-19の感染拡大が人々の活動に及ぼす影響をさらに深掘りする予定である.また,中心市街地の商業施設とも連携し,店舗内外の人々の動きをつかむための研究にも着手する予定である. 一方,長期的な評価については,短期評価をCOVID-19の影響分析に方針転換したことで影響を受けている.今年度はまちづくり活動の長期的な評価にもウェイトを置いて研究を推進する予定である. 2020年は国際会議にも参加を見合わせる状況が続いたが,国内や国外の状況がある程度見通せるようになり,2021年には国際会議に遠隔参加することも予定している.引き続き研究成果を積み上げて,情報発信を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により予定していた国際会議への参加を見送ったことや,データ作成費を人件費として計上していたが販売されているデータを購入する形に入手方法を変更したことが理由である.2021年度もCOVID-19の影響で出張等を控えざるを得ないが,その分発表機会を増やす予定である.
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