研究課題/領域番号 |
20K14856
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
西堀 泰英 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (80531178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | まちづくり / 評価指標 / 歩行者量 / Wi-Fiパケットセンサー / 携帯電話基地局データ / 商業販売額 / COVID-19 / ベイズ構造時系列モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,まちづくりの効果を,長期と短期の両方で評価する手法を開発することを目的としている. 2021年度は,新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響が継続する中で,まちなかにおける人の動きを捉える分析手法に関する,短期的な評価に関する研究を中心に行った.本研究で収集・蓄積しているWi-Fiパケットセンサー(WPS)データと,機械学習の手法であるトピックモデルを適用してCOVID-19感染拡大による感染拡大による中心市街地における人々の活動の変化に焦点を当てた研究成果を,国際会議のCUPUM2021で発表した.また,新規感染者数の推移と人流を関連付ける報道や見解が示される中,人流の変化把握を単一のデータのみで行うことの妥当性を検討するため,WPSデータや,歩行者通行量,駐車場入出庫台数,そして,携帯電話基地局データという複数データに対してベイズ構造時系列モデル(bsts)を適用しCOVID-19感染拡大対策の影響を分析した成果を第63回土木計画学研究・発表会(春大会)で発表した.そして,その研究成果を踏まえてWPSと携帯電話基地局データに焦点を絞って検証した成果を2021年度日本都市計画学会全国大会で発表し,都市計画論文集に掲載された.さらに,WPSデータを用いてCOVID-19 感染拡大の影響による活動の変化を捉え得るかを検証し,各種施策の検討に活用できる可能性を示した成果を第41回交通工学研究発表会で発表し,その内容を高めた内容の論文が交通工学論文集に掲載された. 長期的視点の評価は,地域における商業販売額の変化と自動車分担率などの変化との関連に焦点を当てて分析した結果を,東京大学CSIS DAYS 2021で発表した. 2021年度には複数の研究成果が査読付き論文に掲載され,この研究の重要な成果を生み出すことができたと評価している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初本研究で着目していた中心市街地における短期的なまちづくり活動(例えばイベント開催や道路空間再配分などの公共空間活用の実験など)は,COVID-19の影響で開催中止や予定変更などを余儀なくされた.その影響は,2020年度では収まらず,2021年度も継続した.そのようにCOVID-19の感染拡大がまちづくりの根幹を揺るがしている状況を目の当たりにし,かつ,その実態を捉える利用可能なデータがあった.そこで研究方針を転換し,短期的な分析の対象をまちづくり活動からCOVID-19による影響に切り替えた.それにより,社会的にも関心が高まっているテーマに対してタイムリーに研究成果を発信することができ,研究成果を蓄積することができた. 以上のように,本研究の評価対象であるまちづくり活動が,COVID-19の感染拡大により停滞したこと,それを受けて研究方針を転換してCOVID-19の影響に切り替えたため,本研究課題の進捗がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の感染拡大防止の対策が,それまでの厳しい感染防止対策実施による感染封じ込めから,経済社会活動や日常生活を重視した緩和した対策に変化しており,短期的なまちづくり活動が感染症対策に配慮しながら再開されつつある.こうした状況を踏まえ,2022年度は,引き続き収集したデータを分析し,短期的なまちづくり活動によるコロナ後の人々の活動に及ぼす影響を分析する予定である.また,中心市街地の商業施設とも連携し,店舗内外の人々の動きをつかむためのデータが蓄積されつつあり,これらを用いた研究にも着手する. 一方,長期的な評価については,短期評価をCOVID-19の影響分析に方針転換したことで影響を受けたために2021の進展は小さいものとなった.2022年度は,2021年度の研究をさらに進め,商業活動などの評価指標を用いた時系列的な変化の分析を行う予定である. これらの成果を,国内の研究発表会や国際会議あるいは国際ジャーナルに投稿し,本研究の集大成とするべく研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により予定していた国際会議への現地参加を見送ったため旅費負担がなくなったこと,国内会議がオンライン開催になったことにより参加費の負担と旅費の負担ががなくなったこと,現地調査を控えたり研究会をオンライン開催にしたため旅費の負担が抑えられたことが理由である.2022年度は積極的に学会参加や現地調査,対面での研究会を行う予定である.
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