研究課題/領域番号 |
20K14862
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
北條 俊昌 東北工業大学, 工学部, 准教授 (10708598)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下水汚泥 / 食品廃棄物 / 熱処理 / バイオガス発電排熱 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究成果は以下の通りである。 1.S浄化センター(標準活性汚泥法)の初沈・余剰・混合・消化汚泥とK浄化センター(オキシデーションディッチ(OD)法)の余剰汚泥について50・70・90℃の熱処理を行い、可溶化効果とバイオガス生成ポテンシャル(BMP)の検討を行った。S浄化センターの汚泥は熱処理温度によりBMPの傾向が異なり、温度が高くなると初沈汚泥では低下(471mL/g-VS→414mL/g-VS)、消化汚泥では増加(77mL/g-VS→170mL/g-VS)した。余剰汚泥では70℃でBMPは最大となり90℃で低下した。これらの傾向は各汚泥の炭水化物やタンパク質濃度および可溶化率と相関が見られた。K浄化センターの余剰汚泥では、50℃の熱処理ではBMPは低下したが、70℃、90℃の熱処理では6~8%増加した。 2.バイオガスコジェネレーション施設が稼働しているS浄化センターの汚泥処理プロセスにおけるバイオガス生成量、発電量、排熱発生量などについて調査を行った。投入汚泥1m3当たりのバイオガス生成量は19.3m3であり安定していた。バイオガスの利用用途としては夏季に発電、冬季にボイラーの割合が高くなる傾向が見られたが、これらは外気温や施設の稼働状況による影響が大きいと考えられ、年間を通した変動を明らかにするために令和3年度も継続して調査を行う。 3.バイオガス発電排熱を活用した下水汚泥処理システムのエネルギー効率のケーススタディを行った。標準活性汚泥法では、余剰汚泥を70℃で、または余剰汚泥と消化汚泥を50℃で熱処理を行うケースで発電量が大きくなることが明らかとなった。オキシデーションディッチ法では余剰汚泥から発生するバイオガスによる発電排熱のみでは汚泥処理に必要な熱エネルギーを賄うことができないため、生ごみ等のバイオマスを受け入れる必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度では、各種下水汚泥の熱処理を行い、熱処理温度による可溶化効果、バイオガス生成ポテンシャル等の基礎的知見を得た。 またバイオガスコジェネレーションを行っている浄化センターの現地調査により、バイオガス生成量、発電量、排熱発生量、エネルギー消費量などの基礎的パラメーターを整理した。 さらに、バイオガス発電排熱を活用した下水汚泥の熱処理システムのエネルギー効率のケーススタディを行い、下水汚泥のみに熱処理を行うケースについて、下水処理場のエネルギー自給率を最大化させる熱処理条件を明らかにした。 以上のことから、当初の研究実施計画に対して、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には消化槽に食品廃棄物を受け入れるケースを対象とし、以下の研究課題に取り組む。 1.熱処理による食品系廃棄物の可溶化効果とバイオガス生成ポテンシャルの実験的検討:研究対象とする食品系廃棄物は産業廃棄物収集業者に搬入された混合食品廃棄物を用いる。熱処理温度はバイオガス発電排熱の利用を想定して50℃、70℃、90℃の条件で行う。熱処理による可溶化効果は食品廃棄物の主要成分の分析を行い、熱処理温度や時間による各成分の可溶化挙動を検討する。 2.バイオガスコジェネレーションを行う下水処理場におけるエネルギー効率の現地調査:バイオガスコジェネレーション施設が稼働しているS浄化センターを対象に汚泥処理プロセスにおける単位処理汚泥量当たりのバイオガス生成量、発電量、排熱発生量、エネルギー消費量などについての調査を令和2年度に引き続き行う。これらの値は外気温による影響が大きいと考えられるため各季節ごとに調査を行い年間を通した変動を明らかにする。 3.汚泥処理システムにおけるエネルギー効率および環境影響評価のケーススタディ:上記の課題1および2から得られたパラメーターを用い、汚泥処理システムにおけるエネルギー効率について検討を行うとともに、LIME3を用いた手順に従って温室効果ガス削減に着目した環境影響評価を行い、発電廃熱活用型熱処理技術を組み込んだ最適な汚泥処理システムを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた旅費を使用することがなかったため次年度使用額として2,077円が生じた。 この2,077円は2021年度に行う実験に必要な試薬や器具等の消耗品費として使用する。
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