現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宿主菌として用いる予定の抗生物質耐性大腸菌について、8種類の抗生物質(アンピシリン、セフジニル、レボフロキサシン、テトラサイクリン、カナマイシン、スルファメトキサゾール・トリメトプリム、ゲンタマイシン、イミペネム)を対象に、下水処理場の流入下水と二次処理水、また、塩素消毒後の放流水における存在実態を調査した。その結果、流入下水、二次処理水、放流水で検出された大腸菌株においては、それぞれ10%、20%、50%が1剤以上の抗生物質に耐性を示しており、下水処理が進むほど耐性割合が高かい傾向が示された。 流入下水から検出された2~5剤に耐性を示す多剤耐性大腸菌11株を宿主菌として用い、異なる二つの下水処理場(WWTP AとB)の流入下水を対象として、これらの宿主菌に感染する大腸菌ファージの存在実態を調査した。その結果、WWTP Aの流入下水では、宿主菌として用いた多剤耐性大腸菌11株に感染する大腸菌ファージは検出されなかった。一方、WWTP Bの流入下水では2剤、3剤、4剤、5 剤に耐性を示す多剤耐性菌に感染する大腸菌ファージが検出され、その存在濃度は0.5~2.8 log(PFU/mL)だった。宿主菌として用いた多剤耐性大腸菌は全てWWTP Aの流入下水から単離していることから、同試料(採水日は異なる)で大腸菌ファージが検出されなかったことが考えられる。一方、WWTP Bの流入下水では用いた宿主菌の11株の中、7株の多剤耐性菌に感染するファージが検出された。また、より多くの薬剤に耐性を持つ宿主菌ほど大腸菌ファージの検出率が高い傾向が見られたため(2剤: 3/9, 33%, 3剤: 7/18, 39%, 4剤: 3/3, 100%, 5剤: 3/3, 100%)、今後、より多くの宿主菌を用いて調査を継続していく予定である。
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