本年度は、下水処理場へのファージを用いた薬剤耐性菌に対する制御手法の適用可能性について実際の処理過程を想定し、効果的に除去できるファージの探索と、最適な多重感染度(Multiplicity of infection:MOI)について検討を行った。 効果的に除去できるファージの探索については、これまで使用していた宿主菌Aとそれに感染するファージカクテル(3種類混合)を用いた場合、宿主菌を添加した培地にファージカクテル添加ありとなしで複数のMOI条件(添加するファージの濃度を固定して宿主菌の濃度を調整する場合と宿主菌の濃度を固定して添加するファージの濃度を調整する条件)を与えて培養を行った結果、増殖の抑制は見られたものの濃度がより低下しなかった。そこでファージのプラークに注目し、よりはっきりしたプラークを表すファージは既存のファージに比べて溶菌能力が高いのではないかと推測し、新たにくっきりとしたプラークを表す複数の株を単離して検討した。その結果、くっきりとしたプラークを表すファージを添加した場合では宿主菌の濃度低下が見られ、最適なMOIの条件では培養後に宿主菌が検出下限値以下となった。 最適なMOIの検討においては、MOIを10000~0.0001と幅広く設定し、培養時間を24時間と9時間20分で検討した。その結果、24時間の培養時間と比べて9時間20分で培養した場合においてより宿主菌の濃度が低下しており、MOIは100~0.01の範囲で顕著な濃度低下が見られた。特に、MOIが1の条件で培養後に宿主菌が検出下限値以下となったことから、最適なMOI条件であることが考えられた。
|