研究課題/領域番号 |
20K14865
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
佐藤 公亮 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50788510)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薄板 / 軽量形鋼 / せん断曲げ / 長方形中空断面部材 / リップ溝形断面部材 / 板要素 / 弾性座屈耐力 / エネルギー法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,板厚が2.3 mm未満と非常に薄い軽量鋼構造部材を対象として,その大変形挙動を決定する局部座屈やゆがみ座屈の耐力と座屈後の最大耐力を検討し,従来十分に考慮されていない部材形状や荷重条件の影響を含めて合理的に評価することである.2年目の2021年度では,次の研究を実施した. まず,2020年度に引き続き,せん断曲げを受ける長方形中空断面部材板要素の弾性座屈耐力をエネルギー法により検討した.これまではウェブやフランジの長辺の境界条件を単純支持または固定支持としていたが,隣の板要素の回転剛性とねじり剛性を考慮した弾性支持として解析を実施した.その結果,弾性支持の座屈耐力は有限要素法による部材の座屈耐力より大きい場合があり,正確に評価するためには板要素の連成効果を考慮する必要があることが明らかになった.また,安全側の評価を意図して,四辺単純支持のウェブとフランジの座屈耐力近似式を提案し,断面の幅と高さ及び板厚や材長,曲げモーメント勾配に応じた座屈耐力の算出を可能にした. 更に,せん断曲げを受けるリップ溝形断面部材板要素の弾性座屈耐力もエネルギー法により導出した.ウェブとフランジを対象として,境界条件が単純支持や固定支持や自由の場合の解析を実施し,座屈耐力に及ぼす断面の幅と高さ及びリップ長さや板厚,材長,曲げモーメント勾配の影響を検討した.その結果,長方形中空断面部材と同様に,高さに対して材長が大きい場合に幅が小さくなると,部材の座屈耐力を決定する板要素はフランジからウェブに変化することが明らかになった.また,高さに対して材長が大きい場合に曲げモーメント勾配が大きくなると,ウェブとフランジの座屈耐力は大きくなることが分かった.更に,このようなせん断と曲げの相互作用の影響を考慮して,四辺単純支持のウェブと三辺単純支持一辺自由のフランジの座屈耐力近似式を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,せん断曲げを受ける長方形中空断面部材とリップ溝形断面部材板要素の弾性座屈耐力をエネルギー法により導出し,ウェブとフランジの座屈耐力に及ぼす部材形状と境界条件及び荷重条件の影響を明らかにするとともに,せん断と曲げの相互作用を考慮した座屈耐力の近似式を提案している.また,長方形中空断面部材の弾性局部座屈耐力を有限要素法により検討し,板要素の座屈耐力と比較することで連成効果を明らかにしている.更に,せん断曲げを受ける長方形中空断面部材の大変形挙動を有限要素法により検討し,座屈後最大耐力に及ぼす部材形状と荷重条件の影響を明らかにするとともに,座屈後耐力をAISIの設計式のDSMと比較して評価している.以上の他にも,長方形中空断面部材のエネルギー法による連成局部座屈解析や薄板角形鋼管部材のせん断曲げ実験も進行しており,本研究はおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まずせん断曲げを受ける長方形中空断面部材の弾性局部座屈耐力を板要素の連成効果を考慮してエネルギー法により導出し,部材形状や荷重条件に応じた座屈耐力の近似式を提案する.また,薄板角形鋼管部材の大変形挙動をせん断曲げ実験により明らかにし,これまでの有限要素法解析結果も含めて座屈後最大耐力を座屈耐力の近似式を用いて評価する.また,せん断曲げを受けるリップ溝形断面部材の弾性局部座屈耐力とゆがみ座屈耐力を有限要素法により検討し,これまでのエネルギー法による板要素の弾性座屈耐力と比較することで連成効果や接合線の移動の影響を明らかにする.更に,リップ溝形断面部材の大変形挙動を有限要素法により検討し,座屈後最大耐力を座屈耐力に基づきせん断と曲げの相互作用の影響を考慮して評価する.
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