研究課題/領域番号 |
20K14866
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中楚 洋介 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (70756361)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天井 / 非構造材 / 安全性評価 / 衝撃 / スプリット・ホプキンソン棒法 / ひずみ速度 |
研究実績の概要 |
天井材の衝撃解析を行うには,天井材の物性値の取得が必要となる.しかし,強度や剛性等の基本的な物性値ですらあまり公表されていない.また,多くの材料は,衝撃時のようにひずみ速度(材料の変形速度)が大きい場合には材料自体の強度が増加する傾向にあるが,天井材のひずみ速度効果については報告例がない.そこで,令和2年度は,万能試験機による準静的載荷試験,落錘式の動的試験,スプリット・ホプキンソン棒法による衝撃試験を行いデータの蓄積を行った.広ひずみ速度域での天井材等仕上げ材の圧縮特性を解明した.天井等仕上げ材の代表である,石膏ボード,ケイ酸カルシウム板,ロックウール吸音板は全て圧縮強度のひずみ速度依存性がひずみ速度10-5~102 s-1の範囲で確認された.また,ひずみ速度102 s-1付近で急激に強度が上がることがわかった.但し,ひずみ速度依存性が材料自体によるものか,オープンセル構造という材料の構造によるものかは明らかではない.さらに,試験結果に基づきCowper-Symonds構成式の定数を同定し,天井材の構成式を提案した.その他にも,それら仕上げ材のX線CT撮像を行い,圧縮特性や強度のばらつき等に影響を与える材料の均質性や空隙率の調査を行った. 上記に加え,2021年2月13日の福島県沖の地震により発生した天井落下被害の実地調査を行った.実地調査では,仙台市内に位置する公共ホール,公共体育館,福島市内に位置する公共体育館の計3ヶ所の大規模集客施設を調査し,落下原因等を考察した. さらに,天井材の安全性評価指標を提案し,その内容を日本建築学会構造系論文集に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度では,天井材落下実験を模擬した時刻歴応答解析を行うため,天井材の物性値を蓄積することを目的としていた.万能試験機による準静的載荷試験,落錘式の動的試験,スプリット・ホプキンソン棒法による衝撃試験を行い,広ひずみ速度域での天井材の物性値を取得した.さらに,試験結果に基づき天井材の構成式を提案した.これより,令和2年度の研究は,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,計画通り天井材の材料物性の取得を行った.これによりシミュレーション精度の向上が期待できる.そこで,本年度は以下の計画に沿って研究を行う.マグネシウム合金製の人頭模型を有限要素モデルに置き換え,天井材落下実験を模擬した時刻歴応答解析を行う.本解析では,通常の時刻歴応答解析で良く求める変形モードや固有振動数ではなく衝撃荷重の最大値のみ算出することを目的としているため,人頭模型及び天井材は対称性を利用した1/4モデルとし,計算コストの削減を図る.人頭模型の底面は固定とし,他の部分は鉛直方向のみ動きを許容している.天井材は,落下開始位置は人頭模型から上空1mmとして所定の高さから天井材を落下させた場合における衝突直前速度を理論式によって算出し,速度荷重として天井材に与える.このときの衝撃荷重は,人頭模型底面に発生する反力を4倍(フルモデルへの換算)したものとして算出する.ここでは,要素消去等により天井材の破壊まで考慮した解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で実験や出張が制限されたため,旅費や試験体にかかる費用等が減ったため次年度使用額が生じた.次年度は必要に応じて天井材の材料試験を追加する予定である.
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