研究課題/領域番号 |
20K14869
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
河合 英徳 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00735376)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 極端気象 / 数値流体解析 / ピーク風速 / 乱流 / LES / 気象モデル |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に作成した,メソ気象モデルWRF-LESと空間フィルタリング・リスケーリング手法による気象擾乱を含む流入条件に基づいて,数kmの都市域を対象とした広域数値流体解析を実施し,その乱流特性を吟味した。解析対象については過去に都市域に接近し,強風被害をもたらした気象条件を複数選定し,解析領域内における吹走過程や都市境界層内の乱流の変動特性を分析した。都市境界層内の乱流の変動特性の分析に当たっては,従来の風工学で用いられる乱流境界層に基づく流入条件の広域数値流体解析も実施した。 その結果,気象擾乱を含む流入条件では,都市キャノピー上空に数百メートルスケールの変動を含む気象場の変動が広域解析にも接続され,乱流境界層を流入条件としたケースと比較して,高さ数十m程度の都市キャノピー上部から高さ500m以上の都市境界層上部まで上下の変動が大きくなることが確認された。また,台風の接近時における流入条件では,コリオリ力と遠心力が空気塊に作用することから通常の境界層と比較して鉛直方向の風向の分布が大きくなるが,今回実施した広域解析においても接続された流入条件が持つ風向の分布を維持しながら,流れが吹走されることを確認している。さらに,都市境界層内の流速の時系列変動特性について吟味したところ,スペクトル解析より,従来の乱流境界層の流入条件と比較して鉛直方向,スパン(主流方向に直交)方向において,低周波の風速変動成分のエネルギーが大きくなることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は数ケースの強風時の気象条件において,メソ気象モデルWRF-LESと空間フィルタリング・リスケーリング手法による気象擾乱を含む流入条件を作成し,数kmの都市域を対象としたの広域数値流体解析を実施,その乱流特性を吟味した。予定の解析自体は実施したが,鉛直方向に分布のある気象条件に対する境界条件の設定など一部に解析上の検討事項があるため,次年度も引き続き,広域解析を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はより多様な風速の分布や変動特性を持つ流入条件のデータベースを実施し,実都市を対象とした広域数値流体解析を実施した。来年度は本年度課題となった部分の改善を図ったうえで,気象擾乱を含んだ都市境界層において都市キャノピー内外のピーク風速の発生要因を明らかにするとともに建築物の外装材の風圧力のばらつきについて不確実性の定量化手法の適用を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行に伴い,成果発表予定の学会が中止もしくはオンライン開催となり,旅費の支出予定がなくなったため。また,コロナウイルスの流行等に伴う納品スケジュールの遅れに伴い,購入予定の物品を調達することが困難な状況となったため。
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