今年度の研究においては研究目的に掲げた「美観」・「力学特性」劣化推定モデルおよび「補修負荷」推定モデルの開発を行った。 「美観」劣化推定においては、「4次元雨水挙動推定モデルの開発」として、汚染性状の粒子法解析手法の改善および追加手法の提案を行った。具体的には、①昨年度行った実構造物の3次元モデルを用いた広範囲における雨水挙動再現性の検討、および②粉体解析の導入による汚染粒子の検討方法の導入を行った。①においては、本学校舎の実図面から作成した3Dモデルへの雨水挙動解析結果に対して、汚染源と考えられる支柱からの距離影響を考慮した汚染推定手法を提案して実汚染分布と比較することで高い整合性を確認すると共に、推定手法の汎用性を検討するとして別の本学校舎へのモデル解析を実施した。②においては、①により汚染源との相関性が見られたことから汚染物質(粉体)の挙動も解析対象として、粉体解析ツール「Rocky」の導入を行い複合的な解析手法の利用による解析精度の改善性について検討を行った。「力学特性」劣化推定においては、「力学特性劣化リスク推定モデルの開発」として、外装タイルの剥離リスク推定手法を改善して提案・検証を行った。具体的には、③有限要素法を用いた解析手法において剥離性状から施工時の付着性状を推定して解析に反映する手法を改善策として提案し、アンカーピンやネットを用いた補修による剥離挙動について実験結果と比較して提案手法による解析の正確性も検討を行った。 また「補修負荷」推定モデルにおいては、「補修(部分解体)負荷推定モデルの開発」として、自作の解体負荷解析ツールを用いて動的に対象部材のみを解体解析可能とした。具体的な適用方法として、④対象部材や工法、重機の選定による解析結果(推定負荷)を比較することで補修計画の最適化提案を可能とした。
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