研究課題/領域番号 |
20K14878
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
倉富 洋 福岡大学, 工学部, 助教 (50709623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クロス・ラミネイティド・ティンバー / ラグスクリューボルト / せん断パネル / 間柱型制振装置 / 木質複合構造 |
研究実績の概要 |
2020年度に,頭部をメネジ加工したラグスクリューボルト(以下,LSBと略記)をせん断抵抗させる接合形式を提案し,木-鋼間でせん断力を伝達でき,靭性にも優れた接合であることを明らかとした。床木質化への適用を対象としていたが,木質材料の利用をより促進するためには,床材のみならず壁材の木質化も重要であることから,面材としての使用性に優れるCLTの特性を踏まえ,間柱型制振装置の架台にCLTを適用できるものと考えた。 2021年度では,エネルギー吸収要素となるせん断パネル側のエンドプレートとCLT架台の接合部に本LSBを用いる接合方法を提案し,せん断パネルとCLT架台の応力伝達について調べることを目的とした。架台をCLTとした際のせん断パネルの履歴性状について,接合部に使用するLSBの必要本数およびCLT架台の必要幅の観点から実験的に検討した。 試験体は上下のCLT架台とせん断パネルから構成した。せん断パネルとCLT架台は,予めCLTに埋め込んだLSBと高力ボルトによって接合される。載荷時は,試験体の上下架台と鉄骨土台をLSBと高力ボルトにて緊結し,鉄骨土台は各々載荷梁に接合した。載荷は正負交番繰返し水平力を与え,各サイクルにおいて2回ずつ繰返した。 実験結果より,CLT架台とせん断パネルとの接合に用いたLSBは,LSBの総降伏せん断耐力がパネルの終局せん断耐力を上回るようにすることで,せん断パネル単体と同様の履歴性状を示すことを明らかとした。架台とせん断パネルを接合するLSB本数が不足すると,CLT-せん断パネル間のずれ変形が大きくなり,逆S字型の履歴性状を示した。また,本接合は六角ボルトを取り外すことで容易にせん断パネルを交換することが可能である。CLT架台およびLSBによる接合部を弾性範囲に留めておくことで,パネルを取り換えても同等の性能を発揮できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では2021年度に合成梁効果を調べる実験を実施する計画であったが,実験施設の関係から2022年度に予定していたCLTを架台に用いた制震壁の履歴性状を調べる実験を先に実施した。2021年度の結果より,CLTを架台とした制振装置の履歴性状を実験的に明らかにできたことから,おおむね順調に進展しているものと考えられる。費用の観点から,せん断パネルの幅厚比や使用鋼種などを実験変数に選定することができず,より詳細なデータを蓄積させるところまでは到達しなかったが,既往の研究成果を参照しつつ,今回得られた結果と比較検討を行なう必要があるものと考えられる。試験体数が十分とは言い難い点もあるが,得られた結果を精査し,定量的な評価手法の確立へつなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで要素試験で得られたデータをもとに,2021年度に実施した制震壁の履歴性能を評価する手法を検討する。また,本研究課題で提案しているラグスクリューボルトを用いた接合において,鉄骨梁と木質床の合成梁効果に関するデータがまだないことから,実験的に明らかとする予定である。具体的には,純鉄骨梁と比較して,LSBによって一体化した合成梁がどの程度,曲げ剛性ならびに曲げ耐力を向上できるかを調べるために合成梁試験体を製作し,四点曲げ載荷実験を実施する。試験体製作にかかる費用から試験体数と実験変数を決定するとともに,試験体寸法や載荷方法を合わせて検討する。実験変数には,LSBの径および本数を選定する。本結果より,合成梁効果を発揮するために必要なLSBの本数を算出できることを示し,より合理的な設計へとつなげる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度より生じた差額を試験体製作費に充て,試験体数を増やして実験を実施した。2021年度に生じた差額は,2022年度実施予定の合成梁の試験体に充てることを計画している。
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