現在のわが国では,戦後植林された人工林が木質材料として使用可能となり,国産木材の需要拡大が求められている。そこで筆者は,鋼構造オフィスビルなどの柱梁鉄骨造において従来鉄筋コンクリートで造られている床を,クロス・ラミネイティド・ティンバー(以下,CLTと略記)に置き換える試みを行なってきた。本研究の目的は,柱梁鉄骨造の床・壁を木質化するにあたり,鉄骨部材と木質部材間の汎用性の高い接合部開発を意図して,ラグスクリューボルト(以下,LSBと略記)を使用した新しい接合方法を開発することである。 2020年度では,要素試験としてLSBで接合した鋼木間のせん断性状を調べるため,押抜きせん断実験を実施した。本接合法は靭性に優れた性状を示し,ヨーロッパ型降伏理論式に準じて降伏せん断耐力を評価できることを示した。 2021年度では,壁への適用として,制振パネルを組み込んだ木質壁のせん断実験を実施した。間柱型せん断パネルの架台は,鉄筋コンクリートや鉄骨で造られることが一般的であるが,CLTの高せん断性能を利用して,架台に適用させることを意図したものである。せん断パネルと架台となるCLTは上述したLSBにて緊結した。本制震壁のせん断実験を行い,パネルに十分なエネルギー吸収を発揮させるための必要LSB本数とCLT架台の仕様を示した。 2022年度では,鉄骨梁と木質梁をLSBを用いて一体化させた合成梁の曲げ実験を実施した。LSBの配置間隔と本数を変数にとり,合成率の違いが曲げ挙動に及ぼす影響について検討した。LSBの間隔およびCLTの強軸,弱軸方向の違いに拘わらず,合成梁とした試験体は純鉄骨梁に対して曲げ剛性および曲げ耐力の上昇が確認され,合成梁効果が期待できることを示した。実験後に合成梁試験体を解体したところ,電動工具を用いて円滑にH形鋼とCLTを分離できることを確認した。
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