研究課題/領域番号 |
20K14879
|
研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
鈴木 賢人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (80757055)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | CLT / 床構面 / 有開口 / 性能評価 |
研究実績の概要 |
CLTパネル間をスプラインと帯金物で緊結した有開口床構面(以下、有開口CLT床構面)を対象とした水平加力実験を行い、その面内性能を調べた。また、過去に実施した無開口CLT床構面の水平加力実験結果と比較することで、開口による面内性能への影響を調べた。試験体として、開口の規模と位置を変化させた4種類、各1体の計4体を用意した。試験体寸法は、長さ7400 mm × 奥行3640 mm × 厚さ150 mmである。各試験体は、4枚のCLTパネルで構成し、CLTパネルの奥行を変化させることで開口を設けた。使用したCLTパネルの仕様は、強度等級をMx60-5-5、樹種をスギ、接着剤を水性高分子イソシアネート系樹脂接着剤とし、幅はぎ接着はしなかった。加力は、正負交番加力とし、試験体の両端を単純支持した状態で、両支点からそれぞれ2730mmの位置2点に設置した押出し単動ジャッキ(4本)で行った。 今回の実験では、開口の有無によって床全体の耐力、剛性ともに3~6割程度低くなった。開口規模や開口位置が変化すると面内性能も変化したが、開口が直接的な原因でなく、開口設置に伴うスプラインの長さや帯金物(Xマーク金物STF)の位置の変化が面内性能に大きな影響を与えた。 パネル間の挙動に目を向けると、せん断挙動は、スプライン長さが短いほど耐力、剛性ともに低減したが、スプライン長の変化に比べ剛性低下の程度は小さかった。これは、スプライン合板に対する左右のパネルの相対変位が均等でなかったこと、帯金物(Xマーク金物STF)のせん断抵抗、パネル間の摩擦抵抗などによる影響と推察されるが、引き続き検討が必要である。 曲げ挙動は、奥行の変化によって大きく変動し、奥行が半分になると曲げ剛性は9割程度低減した。しかし、既往の評価法によって概ね評価できることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度は有開口CLT床構面の水平加力実験を行い、開口の有無、開口位置、開口規模による、CLT床構面の面内性能の変化を把握することができた。また、パネル間の挙動に関する実験データも得られ、次年度以降行う力学モデル構築に資する有用な成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、床構面の構成における様々なCLTパネルの割付を想定して、CLTパネルの強軸方向をパラメータとした接合部実験を行う。また、初年度の実験でCLTパネル間のせん断性能がスプライン長に反比例しなかった要因を探るための実験も追加する必要がある。 さらに、接合部仕様の違いによる、有開口CLT床構面の面内性能の変化を明らかにするため、力学モデルの構築、パラメトリックスタディを行う。ここまでの実験データと解析データを活用しつつ、CLT床構面を剛床とみなせる仕様を明示する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大防止対策として密になることを避けるため、当初予定していたよりも1日あたりの作業員数を減らした作業となり、その結果、作業日数が増え、実験補助費が当初計画に比べ上昇した。そのために行った前倒し支払請求と実支出額の差額として次年度使用額が生じた。
|