本研究は、鋼板挿入式集成材ブレース耐力壁において塑性変形要素となるブレース端の鋼板挿入ドリフトピン接合部を対象として、急激な耐力低下を招く集成材の割裂破壊が抑制され終局時の耐力が確保される接合部仕様とその終局変形性能の実態を提示するとともに、それにより構成された耐力壁の靭性能評価法を提案しようとしたものである。 集成材の割裂破壊を抑制する方法として他の接合方式で有効性の確認が得られた全ねじスクリューを割裂想定線に打込む補強方法を採用し、J1相当の樹種グループの集成材とSS400のドリフトピンによる実用上想定され得る接合仕様とした試験体を用意して打込む本数や深さを変数として正負繰返し条件下での実大実験を実施した。無補強では5mm程度で割裂するのに対して、補強度合いの増大に応じて終局時の変形性能が増大することを示した。鋼板を挿入するスリット部の開きを抑制した場合、標準的なドリフトピンの12mm、16mm、20mmのピン径では、補強して割裂が抑制されるとピン径に寄らず20mm~30mmの変形においてドリフトピンが破断する破壊モードとなることを示した。補強して割裂が抑制された一部の仕様において、強度の低いJ3相当の樹種グループの集成材を用いたものやSN400B、SN490Bのドリフトピンを用いたものとの比較を行い、ドリフトピンの引張強度が高い場合にはやや破断が遅れ終局変形性能が向上する可能性を示した。 また、実験的検討により確認された割裂が抑制される仕様の鋼板挿入ドリフトピン接合により構成されるブレース耐力壁について剛性、耐力、終局変形性能の導出方法を提案して、実用を想定した接合部仕様を対象として靭性能評価を試行し、ブレースの断面や角度および長さによる影響を把握した。
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