研究課題/領域番号 |
20K14882
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
樋田 浩一 東北大学, 加齢医学研究所, 博士研究員 (20862014)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 楽器演奏 / 演奏同期 / 聴覚フィードバック / 室内音響特性 / タイミング |
研究実績の概要 |
楽器などの道具に内在する遅延や,音速や光速など刺激の伝搬特性に起因した遅延など,我々は様々な感覚フィードバックのタイミングを考慮して身体を制御する適応的なメカニズムを有している.コンサートホールでのオーケストラ演奏場面に着目すると,遠方から到来する他の奏者の遅延した演奏音つられることなく,指揮者やコンサートマスタの動きを手がかりとしてタイミングの同期を測り,演奏を実現している.このような複数の感覚情報を利用した身体制御の方略や,その知覚メカニズムを明らかにすることを目的に,実験心理学的手法を用いた検証を行う. 研究初年度に当たる令和2年度は,指揮者やヴァイオリニスト(コンサートマスタ)などのプロの演奏家を対象として,インタビュー調査を実施した.調査を通じ,「奏者はステージ上で実際どのように他者の演奏が聞こえているのか」,また,「どのようにしてタイミングを合わせているのか」,「コンサートホールの建築的な要素による違いはあるのか」といった項目について,質的研究としてまとめた.奏者からは,「遅延して到来する演奏音につられることはない」とのコメントも得られ,研究課題の土台を支える貴重な知見が得られたといえる.インタビューの結果については,国内学会で報告を行った.インタビュー調査で得られた結果に基づき,心理物理実験の形に落とし込める要素を検討した.奏者がステージ上でやり取りする感覚情報群を実験的に呈示・操作可能なシステムを構築し,予備実験を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍の影響により,コンサートホールでのオーケストラの収録や実験を断念し,研究計画の見直しを実施した.一方で,感染症対策を講じることが可能な新たな実験系を発案・構築し,当初の研究計画にはなかった手法で,研究課題に対してより効果的なアプローチが可能となった.以上のことから,当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
ステージ上の演奏環境を模擬的に再現し,プロの奏者を対象とした心理物理実験を通じて,感覚情報処理メカニズムの精緻な検証を行う.研究計画上の実験実施順序は,コロナ禍の感染拡大状況を考慮しながら,適宜入れ替えて行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,旅費および謝金の支出がなくなった.成果発表を見送ったデータもあるため,来年度以降に使用を予定している.
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