研究課題/領域番号 |
20K14884
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
中嶋 麻起子 広島工業大学, 工学部, 助教 (40773221)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気生藻類 / 環境測定 / 外壁汚れ / 温湿度 / 高温暴露 / クロロフィル蛍光測定 |
研究実績の概要 |
本研究では、気生藻類の温度と水分(湿度)に関する生育・死滅条件を明確にし、高温暴露という新しい観点からの藻類抑制手法の提案を目的としている。これまでに実測・解析に基づき、外壁のどのような部位に藻類が生育し、それに対して周辺環境条件や外壁表面温度及び相対湿度がどのように関与しているかを明らかにしてきた。さらに、その中で高温による藻類の死滅可能性を指摘してきた。本研究ではそれらの知見に基づき、温度と水分条件(大気中の水蒸気、材料内水分、雨水、結露など)についての定量化、高温による藻類抑制手法の建物外壁面での適用可能性についての検証を行っている。本年度の研究実績としては「クロロフィル蛍光測定を用い、高温暴露による藻類の生育抑制実験」「建物外壁の熱水分性状と藻類の増殖・死滅予測モデルの改良」を行った。 1. クロロフィル蛍光測定を用いた高温暴露による藻類の生育抑制実験:藻類は乾燥時には強い耐熱性を持つが、湿潤時には温度変化に敏感である。この性質を生かし、実験室内で藻類を湿潤状態で30-60℃の温度に数分から数十分暴露し、死滅条件の定量化を行った。 2. 建物外壁の熱水分性状と藻類の増殖・死滅予測モデルの改良:2020年度と2021年度に実施した実験結果を基に、過去に作成した藻類の増殖・死滅モデルの改良を行った。特に、藻類が生育可能な温度範囲に関する情報を明確にし、藻類の増殖・死滅・休眠に関する現象をモデルに反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、2020年度から継続している「高温暴露による藻類の生育抑制実験」「建物外壁の熱水分性状と藻類の増殖・死滅予測モデルの改良」を中心として研究を実施した。 本年度は30から60℃の温度域、5分から60分の高温暴露時間を様々なパターンで組み合わせ、暴露温度・暴露時間と死滅率との関係についての定量化を行った。その後、これらの測定データをもとに増殖・死滅予測モデルの「死滅」に関する条件の変更を行った。今後、実外壁での測定結果と作成したモデルの比較と更なる改良を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画として、当初の予定通り順調に進行しているため、研究段階を早めに推進したいと考えている。 ヨーロッパ地域での藻類による外壁汚れに関する研究では、外断熱工法の外壁では夜間放射により外壁表面温度が低下することで高湿度状態となり、藻類を中心とした汚れの発生が指摘されていた。近年、日本においても外断熱工法の普及、また、高気密高断熱化を目指した断熱材の追加により外壁の性能が変化しつつある。今後は、改良した藻類の増殖予測モデルを用い、日本国内のいくつかの気候区を対象とし、様々な工法の外壁における表面温湿度性状の解析と測定を行い、増殖予測モデルの一般化を進める予定である。
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