本研究では、気生藻類の温度と水分(湿度)に関する生育・死滅条件を明確にし、高温暴露という新しい観点からの藻類抑制手法の提案を目的としている。過去、実建物での調査、環境測定とシミュレーションモデルに基づき、外壁のどのような部位に藻類が生育し、それに対して周辺環境条件や外壁表面温度及び相対湿度がどのように関与しているかを明らかにしてきた。さらに、その中で高温による藻類の死滅可能性を指摘してきた。本研究ではこの知見に基づき、温度と水分条件(大気中の水蒸気、材料内水分、雨水、結露など)についての定量化、高温による藻類抑制手法の建物外壁面での適用可能性についての検証を行っている。2021年度までの実験によって得られた「クロロフィル蛍光測定を用いた高温暴露による藻類の生育抑制実験」の結果に基づき、2022年度は引き続き「建物外壁の熱水分性状と藻類の増殖・死滅予測モデルの改良」の実施、モデルの妥当性評価を行った。 建物外壁の熱水分性状と藻類の増殖・死滅予測モデルの改良:実験結果に基づき、藻類が生育可能な温度範囲に関する情報を明確にした予測モデルの改良を行った。さらに、壁体の構成などを含めて、周辺気候条件と建物条件を与えることで、短期的・長期的に藻類の発生を予測可能なモデルの作成を行なった。 モデルの妥当性評価:外壁材料の屋外暴露実験の結果を用いて、作成した予測モデルの妥当性評価を行った。さらに、日本国内のいくつかの気候区における気象条件を用いたシミューレーションを行った。
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