研究実績の概要 |
脱炭素社会を向けた建築物の省エネルギー化の観点で,空調負荷の削減,なかでも外気導入に伴う換気負荷の最適化は建築物の用途に関係なく現在においても非常に重要な課題である.本研究では,給気と排気で熱交換を行うことで省エネルギー効果が期待される小型の全熱交換型換気システムに採用される全熱交換エレメントに着目し,全熱交換効率の更なる性能向上のための数値解析モデルの開発に取り組んだ. 最終年度に実施した研究では,構築した数値解析モデルの境界条件・初期条件,定数同定について,予測精度検証を実施した.均一な流入条件の2つのReynolds数条件(Re=280,2800)における速度,顕熱,潜熱のプロファイルの結果から全熱交換エレメントの流路内の境界層厚さ,断熱・断湿パッチの設置位置,面積の影響を詳細に確認した. また,実機として作成可能な小型の熱交換エレメントの幾何形状を基に,流路構成材料内部まで高解像度で再現する数値解析モデルの作成に取り組んだ.具体的には,CFD解析と材料内の熱・水分・臭気物質の3成分同時移動モデルを気相-固相界面でのフラックス保存式を共有させた連成解析モデルとして整備し,小型の熱交換エレメント流路内(空気流動部分)と材料内(固体部分)を連成して解析する一連の詳細モデルを作成した.作成した数値解析モデルを用いてCFD解析を行い,全熱交換エレメントの幾何形状,有効全熱交換面積の特徴と全熱交換効率の関係を局所Nusselt数,局所Sherwood数の関係で結果を整理している.
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