研究課題/領域番号 |
20K14900
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 由乃 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (20825260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大型シェアハウス / 入居者 / 共有部 / アンケート / 空室率 |
研究実績の概要 |
近年、空き家の増加、集合住宅の老朽化、社会的孤立や孤独死が社会問題として取り上げられる一方で、空き家を他人同士が集まって暮らすシェアハウスに改築するなど、「一住宅に一家族」という従来の生活スタイルとは異なる住まいの選択肢が広がりつつある。中でも特に、近年見られるようになった大型シェアハウスには、鍵付きの個室に加え、充実したキッチンスペースやシアタールームなどの特別室があり、類似した価値観や生活スタイルを有する人々が集まる場となっている。 そこで本研究は、近年見られるようになった、大型シェアハウス(31戸以上の個室と共有スペースを有する集合住宅と定義する)に着目し、特に2020年度は現在学術的にほとんど明らかにされていない基本的な実態を統計的に整理・分析した。データはインターネット上に公表されている各物件の基本情報と、一年以上継続して収集している空室率の推移に着目して分析を行った。 さらに、大型シェアハウス運営会社の協力のもと、入居者へのアンケート調査を実施し、入居理由や入居後の満足度に関する調査を行った。さらに、COVID-19の影響が長期化していることを受けて、大人数で利用する共用部のある大型シェアハウスにおいても生活スタイルに何らかの変化があったと考えられるため、COVID-19流行前後の大型シェアハウスの空室率の変化並びに入居者の共用部の利用の変化に関しても調査を行った。 調査の結果は2021年9月に国内学会発表を行う予定で、梗概を投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はウェブサイトから得られるデータ分析を中心に調査を行ったが、これは当初の研究計画通りに進捗している。さらに、COVID-19の影響が長期化していることから、大型シェアハウスでの入居者の生活スタイルにも変化があると判断し、当初計画していなかったCOVID-19流行前後の大型シェアハウスの空室率の変化、並びに入居者の共用部の利用頻度等の変化についても調査を行った。ただし、入居者へのアンケート調査に関しては、運営会社への協力を依頼したが、COVID-19の影響が落ち着いてから改めて検討したい、といった理由で協力が得られなかったケースもあり、今後の調査においても社会状況に応じて、協力者の方へ過度の負担をかけることのないように研究内容を再検討していく必要があると考えている。 本研究を遂行するにあたり、現在の社会状況を反映して調査内容の追加・修正を行っているが、他者と関わりながら生活することの重要性について、人との関わりが制限されている現在、改めて見直す必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度のアンケート調査を実施するに際して、大型シェアハウスの運営会社に、継続的な研究協力を依頼することが出来た。COVID-19の影響の長期化により、当初計画していた、大型シェアハウスを実際に訪問し、現地調査や入居者への対面インタビュー調査を実施するのが困難な状況ではあるが、オンラインでのインタビュー調査等様々な可能性を検討しながら、大型シェアハウスでの生活スタイルの現状を明らかにし、他者との関係性構築の可能性を高める住まいのあり方について調査分析を行っていく予定である。また、当初は予定していなかったCOVID-19の影響も考慮し、大型シェアハウスにおける共用部の使われ方の変化等についても、併せてより詳細な調査を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、COVID-19の影響により海外出張・国内出張が制限されたことから、旅費として計上した研究費を使用することが出来なかった。2021年度も物理的な移動の制限の可能性があるが、その場合はオンラインシンポジウムやオンライン学会の参加費、オンライン会議等に必要な設備購入費としての使用を検討している。 また、研究内容に関してもCOVID-19に関する新たな追加調査を実施したため、研究内容の再構成を行う必要があり、論文としてまとめるまでに想定よりも時間をかけたが、データとしては当初の予定以上のものが得られており、2021年度以降順次まとめていく計画である。
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