研究課題/領域番号 |
20K14905
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮地 茉莉 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (80868597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バングラデシュ / サイクロンシェルター / 住宅型シェルター / 地域住民参加型 / 避難所生活 / 災害復興 / 防災 |
研究実績の概要 |
本研究はサイクロン常襲地であるバングラデシュにて、避難所であるサイクロンシェルターの平常時および避難時の利用実態を明らかにし、維持管理および避難時の利用の課題をまとめ、発展途上国の経済問題やジェンダーなど、文化背景を考慮したサイクロンシェルターのあり方を提示することを目的としている。 2020年度はコロナ感染拡大のため現地調査は実施できなかったが、2021年度はバングラデシュのNPO団体に調査を委託し、2009年のサイクロン・アイラ(Aila)被災後にクルナ管区パドマプクルにBRAC大学によって建設された住宅型シェルター43軒の居住後調査として実測調査とドローンを用いた外観悉皆調査を行った。パドマプクルは2020年にサイクロン・アンファン(Amphan)の被災地であり、住民の避難行動と住宅型シェルターの避難施設としての機能について、アンケートシートを用いたインタビュー調査も実施した。結果として、43軒の全軒で住民による増改築が確認されたことから、住民が工夫して住みこなしをしていること、2011年の竣工後に住宅型シェルターの譲渡・売買が行われていたことが明らかになった。また、サイクロン被災時において、住宅型シェルターの被害が一般的な農村住宅と比較して軽微だったこと、一方で避難所としての利用は42世帯中11世帯にとどまっていたことから、住宅型シェルターの避難所としての利用には課題が残ることがわかった。 調査結果は2022年度の日本建築学会の全国大会で発表するほか、論文としてまとめて投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の研究計画では、公共施設兼シェルターと住宅型シェルターの利用実態、地域住民参加型シェルターの活用について現地調査にて明らかにする予定であったが、コロナ感染拡大の影響により、日本からバングラデシュへの渡航が困難となり、申請者自身による現地調査が実施できなかった。しかしながら、現地のNPO団体と協力し、現地調査を委託することで、住宅型シェルターに関して、実測調査とドローンを用いた悉皆調査、アンケートシートを用いたインタビュー調査を実施でき、その過程で公共施設兼シェルターの利用についてもヒアリングを実施できた。 以上より、進捗としては予定よりかはやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は地域住民参加型シェルターの利用実態を現地調査する予定である。コロナ感染拡大の影響より、渡航が困難となった場合でも、NPO団体に協力を要請し、調査を委託することで実現可能であると考える。また、地域住民参加型シェルターの運営団体とは、メールやオンライン上でのヒアリングが可能であるため、国内においても資料収集・ヒアリング調査を実施することはできると考える。 また、2021年度にパドマプクルにおいて住宅型シェルターの現地調査が詳細に実施できたため、2023年度に予定していたBRAC大学へのフィードバックを早めて2022年度に実施予定である。BRAC大学へのフィードバックを早めることで、住宅型シェルターの評価や課題を整理し、文化的背景を考慮したサイクロンシェルターのあり方について仮説を立て、2023年度に現地調査にて検証を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の研究計画は、バングラデシュにフィールド調査を予定していたが、コロナ感染拡大の影響により、日本からバングラデシュの渡航が困難となり、申請者によるフィールド調査が実施できず、現地のNPO団体に調査を委託した。2022年度は申請者による渡航費もしくはNPO団体に引き続き現地調査を委託し、調査機器の購入と調査員への交通費及び謝金として支出する予定である。
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