本研究は、これまで政策的に重要視されながらも明確に定義付けられてこなかった「関係人口」概念の再定義及び計画論への展開を試みるものである。 具体的には、申請者が長きにわたり信頼関係を築いてきた過疎地域2地区を対象に、地域づくりへの参与視察を通したヒアリング調査、及びその分析による①客観的指標に基づく関係人口の構造把握、②移住を前提としない関係人口のモデル化と検証を行う。その上で、③関係人口の再定義及びそれを踏まえた過疎地域の計画論を構築することを目的としている。 2023年度は引き続き参与観察とヒアリング調査、及び対象とした2地区以外の事例調査も踏まえ、関係人口の役割と意義についての整理を行なった。とりわけ大学生を関係人口として位置付けた域学連携事業について、その成果と課題を取りまとめた上で1)地域づくりのプロジェクトの方向付けを目指した中長期のシナリオ設計、及び2)余白や偶然性を計画的に残したシステム化の検討の2点を、今後の計画論構築に向けた論点として整理することができた。併せて前年度の研究成果(関係人口各人からみた関係人口の再考に向けた要点整理、関係人口による社会空間の局所的変動と対応事例等)を踏まえ、研究の総括を行なった。 なお本研究の対象地の1つである兵庫県洲本市における域学連携10周年シンポジウムの企画運営、登壇を通した各主体へのヒアリング、及び研究成果の一部を含む事例報告やディスカッションを実施したことも付記しておく。
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